Column

聴覚障害者向け遠隔手話通訳ツールを提供開始
東京2020大会ボランティアオリエンテーション

文・写真:星野恭子

 

 

2月上旬の東京会場から始まった東京2020大会フィールド キャスト(大会ボランティア)の応募者を対象にしたオリエンテーション。その中で、ボラサポでは4月から、タブレット端末でのテレビ電話による遠隔手話通訳など、聴覚障害者向けコミュニケーションツールの提供を始めました。

  

フィールド キャストには20万人を超える人が国内外から応募しており、7月下旬まで各地で行われるオリエンテーションなどを経て9月頃をめどに、実際に活動する8万人のフィールド キャストとのマッチングが行われます。オリエンテーションでは、応募者に対する意識付けやボランティア同士の交流などを行う説明会と、参加意欲や応募内容などを確認する面談が行われ、応募者自身が活動への思いなどを担当者に直接伝えられる貴重な機会です。

 

「多様性と調和」をコンセプトの一つに掲げる東京2020大会では障害のある人のボランティア参加も奨励されており、オリエンテーション会場では多様な人のニーズに応える情報保障が欠かせません。

 これまで、聴覚障害者向けには手話通訳者や筆談ツールなどが整備されてきましたが、410日に東京スポーツスクエア(東京都千代田区)で行われたオリエンテーションから、タブレット型端末を利用したコミュニケーションツールが新たに導入されました。

 

これは聴覚障害者と、手話のできない面談員とのコミュニケーションをサポートするもので、会場に設置したタブレット端末からテレビ電話を介し、遠隔地にいる手話通訳オペレーターが会話をサポートします。日本財団が2013年から進めているモデル事業、「電話リレーサービス」をベースにしています。

 

テレビ電話だけでなく、ボタン一つで筆談や音声認識による文字表示のサービスにも切り替えられるので、手話が得意でない聴覚障害者にも安心のツールです。

 

■イメージ図

 聴覚障害者の中には、聴覚の障害によって、日本語の読み書きの習得に難儀し、手話が母語である人もいます。いわば「第二言語」ともいえる日本語だけでは十分なコミュニケーションが取れない可能性もありました。そこで、手話による情報保障として、このツールが導入されることになったのです。

 

この日のオリエンテーションでは、東京・江戸川区の会社員、三浦寿(ひさし)さん(38)がこのツールを使って面談に臨みました。面談員がタブレット端末に向かって声で投げかけた質問を、テレビ電話でつながった手話通訳オペレーターが画面を通して手話で通訳し、三浦さんに伝えます。画面を見て質問を理解した三浦さんが答えを手話で返し、オペレーターが今度は声で面談員に伝えるというやりとりで、コミュニケーションをとりました。

 

面談を終えた三浦さんは、「普段、健聴者とのコミュニケーションは苦手ですが、このタブレット(を使ったツール)は使いやすく、満足できました」と笑顔で話しました。

 

今後、このツールは東京会場だけでなく、7月末までつづく各地方会場でのオリエンテーションでも提供される予定です。全国各地の聴覚障害のある応募者の方々が、コミュニケーションの不安なく、フィールド キャストへの思いを存分に伝え、生き生きと輝く一歩を踏み出すために、このツールがきっと活躍してくれることでしょう。

 

■三浦寿(ひさし)さん
38歳/会社員/東京都江戸川区在住

 ――2020大会では障害のある人のボランティア参加を推奨しています。その意義をどう感じていますか?

 

私には聴覚障害があるので、いつも助けてもらうことが多いです。だから、私も困っている人をサポートしたいという気持ちがあります。同じ人間として、お互いに助け合っていきたいからです。

 

例えば、私は海外旅行で道に迷ったとき、言葉が通じないのに助けてもらったことが何度もあり、感謝しています。今度は私が日本で、誰かを助けてあげたいと思っています。

 

――東京2020大会をきっかけに、社会が変わっていくことへの期待は?

 

オリンピックやパラリンピックの応援で盛り上がり、さらに聴覚障害者が参加するデフリンピックの応援にもつながってほしいです。

 

――今回のオリエンテーションに参加した感想はいかがですか?

 

最初は、聞こえる人たちばかりの中でどうコミュニケーションをとればいいか不安でした。でも、手話通訳者が近くにいてくれたので、スムーズに会話が進みましたし、周りの人も優しく、少しずつ気持ちが通じるようになりました。

 

「はじめの一歩」という感じで、今後こういう経験を重ねていけば、積極的に活動できるかなと思いました。

――面談では、タブレット端末を使い手話通訳オペレーターを介して会話をするツールが使われました。いかがでしたか?

 

インターネット接続が切れてしまったら、という不安もありましたが、スムーズでした。私にとって手話は大切な母語であり、手話による情報保障は重要です。

 

――聴覚障害者に対する情報保障には筆談という方法もありますが?

 

筆談よりも、このツールのほうが使いやすいです。聾者には日本語が苦手な人もいて、長い文章をどう書けばいいか分からず、短い単語で済ませてしまうことも多いからです。タブレットを通して手話を使えるし、顔を見合わせて確認もできます。とても満足できました。

 

――面談では、大会中に聴覚障害者として配慮してほしい点は伝えましたか?

 

手話通訳者のサポートや筆談など、周りの理解とサポートが得られればと思います。とくに、災害時の情報保障についてお願いしたいです。

 

――大会では、どんな活動がしたいですか?

 

大会には外国から聴覚障害者も来ると思います。その対応に備えて、今、国際手話を勉強しています。聞こえない人も一緒に楽しめるように、コミュニケーションの壁を超えられるような活動がしたいです。

 

「スポーツが好き」という気持ちはみな同じだと思うので一緒に楽しみたいですし、日本は素晴らしい国だとアピールしながら、おもてなしができたらと思っています。