Column

貴重な一日を振り返って
~パラ駅伝 in TOKYO 2019 視覚障害者運営ボランティア体験記~

先日、駒沢オリンピック公園にて開催されたパラスポーツイベント「パラ駅伝 in TOKYO 2019」(主催:日本財団パラリンピックサポートセンター)。筑波大学理療科教員養成施設、筑波大学附属視覚特別支援学校、筑波技術大学から、視覚障害のある学生や教員計14名の皆さんが、運営ボランティアとして参加しました。

貴重なボランティア実践の機会となった今回の体験記を、教員、学生それぞれの立場から書いてもらいました。

 

心地よくチームで取り組むボランティア
~視覚障害者自身のボランティア体験記~

筑波大学附属視覚特別支援学校
鍼灸手技療法科 教諭
工藤 滋

 東京2020大会の3つの基本コンセプトは、「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」。それならば、視覚障害者自身が障害のない方と力を合わせてボランティア活動にベストを尽くすこと、その体験や成果を生徒や仲間に継承していくことは、東京オリンピック・パラリンピックが目指す活動そのものになるはずである。

 実際、ぼくは日々鍼灸マッサージの臨床に携わっているのでヘルス・ケアの活動に、また研修会・講習会の企画・運営をする中で、受付業務や視覚障害者の誘導法の説明にも当たってきているので案内の活動などにも当たることができそうである。

 ただ、大きな大会において多くのボランティアに混じって、視覚障害者が活動するには、準備と経験が必要である。そこで今回は、パラ駅伝 in TOKYO 2019にて、来場者への資料配布のボランティア活動に参加してみた。

 

 当日は晴れ。日陰に入ると風が冷たく感じられたものの、日向はぽかぽかと暖かく、絶好の運動会日和。他のボランティアの集合時刻より1時間早く集まって、会場の下見や活動内容の確認、配布物に触れての確認などをした。視覚に障害があると、慣れない場所での活動には時間がかかるが、事前にしっかり予習をしておけば、かなりスムーズに活動できるからである。

 時刻は10時50分。ぼくらはメイン・ゲートで各班に分かれて活動を開始した。ぼくの担当は応援用のハリセンの配布。左手に10枚程度を重ねて持ち、それを右手で1枚ずつ取っては来場者に手渡していく。

 「こんにちは!!」
 「応援よろしくお願いします!!」
 はじめはそんな声がけからはじめたが、時々受け取らずに通り過ぎて行こうとする方もいた。それで、
 (そうか、まだ折りたたまれていないから、これがハリセンだと気づかないんだな)
 と思って、
 「ハリセンです!!」
 「ハリセンどうぞ!!」
 「ハリセン、お受け取りください!!」
 と、せりふを変えると、なんとなくみんなが受け取ってくれるようになった気がした。

 11時半を回ると、急ピッチで来場者は増えてきて、
 「ハリセンです!! ハリセンどうぞ!! ハリセンです!! ハリセンどうぞ!!」
 と大忙し。しかし、大きな声で挨拶するのは気持ちがいい。これはカラオケ効果のようなものかもしれない。

 さらに来場者の方から、
 「こんにちは!!」
 とか、
 「ありがとうございます!!」
 と言われると、とても嬉しくて、思わず笑顔が弾けた。
 (挨拶っていいなあ。感謝されているんだなあ)

 

 

 そのうちにピークが過ぎて、来られる方が徐々にまばらになってきた。そうなると、近づいてくる方がいるのかどうか分からない視覚障害者は少し困る。誰もいないのに挨拶し続けるのもおかしいし、かと言って来られているのに挨拶をしないのも、また変だからである。

 けれども、ぼくの班には自然にチームワークができてきていて、ぼくのすぐ後ろにいる高身長の相棒が、こちらに近づいて来る来場者がいるとまず、
 「こんにちは!!」
 と声をかけてくれる。そうすると、
 (おっ、お客さんが来たんだな)
 と分かるので、ぼくも続けて、
 「こんにちは!! ハリセンです!!」
 と続ける。また、相手がうまくハリセンを受け取ってくれないと、相棒が、
 「ハリセンをお受け取りください!!」
 と言ってくれるので、ぼくは再度改めて手を伸ばしてハリセンを渡すことができた。
 いつの間にかできたこのチームワークが、ぼくにはとても心地よかった。

 12時45分になって業務終了。ぼくが、
 「お客さんがこちらに向かって来た時に、先に『こんにちは!!』って言ってくれたから、人が来たって分かって助かりました。」
 と言うと、
 「いやあ、ハリセン渡すの上手ですね。全然普通に渡していて、驚きました。」
 と言われ、思わず心の中でガッツ・ポーズ! どうやら「多様性と調和」を実現できたようだった。

 

 後日、同じく参加した学生たちにも感想を聞いてみると、「ボランティアする側の立場で活動したことで、障害があっても人の役に立てるのだということを強く実感できた」、「障害のない方は視覚障害について尋ねることに躊躇したり、接し方に戸惑ったりしていたので、相互理解のために自らの見え方を伝えていくことが重要であることに気づかされた」など、それぞれにとっても貴重な体験となったようだった。

 今回の活動はほんの小さなものだったかも知れないが、ボランティア活動の心地よさ、メンバーとの間に生まれた自然なチームワークの温かさは、得がたい体験であり、広くみんなに伝えたい。

 さあ、視覚障害のあるあなた、ぼくと一緒にボランティアしませんか? 新たな世界が拡がりますよ!!

 

 

 

 

念願のボランティア活動

筑波大学理療科教員養成施設 1年 松村めぐみ

 私は今回、所属する学校からの情報提供を受け、このボランティアへの参加を決めました。

 一般的にインターネット等で募集しているボランティアは、視覚障害があると、登録や活動の過程で制限があり、参加を拒まれることがあります。私自身も、以前からスポーツやボランティアには興味がありました。しかし、実際に参加しようとすると、強度の弱視という視覚障害がある点から、断られたことが何度もありました。

 今回は視覚障害があるということをご理解いただいて、念願のボランティア活動を行えることが嬉しく、応募しました。視覚障害に対してサポートのある中で参加できるという点が凄く心強く、嬉しかったです。

 障害により断られることなく参加できることに喜びを感じ、それが今回応募した一番の理由です。

 

 事前に行われた説明会では、イベントの概要や詳細な仕事内容について丁寧に説明していただき、当日の流れや作業内容について具体的なイメージを持つことが出来たため、不安を残すことなく当日に臨むことが出来ました。

 また、その際、質疑応答の中で視覚障害者の活動の仕方についての質問があった時、「視覚障害者の方の活動のサポートをするために人を配置するというのは、ボランティア活動の上で本末転倒になってしまう」という回答があり、印象に残っています。視覚障害があってもボランティアの一員として一つの仕事を任せていただき、一般の方と同じように参加したいという意思を尊重していただけているようで嬉しく思いました。

 

 パラ駅伝当日、私たち視覚障害のあるボランティアは一般のボランティアの方よりも早く集合し、会場内の案内や仕事の流れについて説明してもらいました。時間に余裕を持って行動することができ、安心して活動に臨めました。

 私は入場ゲートでのハリセンの配布作業を行いました。同じく、ハリセンを配布する一般のボランティアの方が同じレーンに数人いました。私は何人かボランティアが並んでいる中で、後方に位置していたので、既にハリセンを受け取り、配布が不要なお客様も通って行かれました。なので、どの方に配布すれば良いのか、どの方には配布が必要ないのかが判断出来ず、少し消極的になってしまいました。この点については、同じレーンの方と相談して、よりよい位置に並べばよかったなと反省点として残りました。

 また、お客様に配布物を受け取っていただけた時やお礼を言っていただけた時にはとてもやりがいを感じることが出来ましたし、ボランティア業務の終了後、昼食からパラ駅伝終了までは、同じグループの方と活動し、交流を深めることも出来ました。

 

 

 パラ駅伝の観戦時や、最後にフィールドに出た時などには、会場の様子や出場されている方のことなどを説明してもらえたことがすごく嬉しかったです。「今◯◯さんが場内に来た」、「映像がモニターに出てる」など、私にとってどれも自分では確認できないものばかりで嬉しかったです。

なにより、特に説明してほしいなどとお願いをしていなかったにも関わらず教えていただけたことが、驚きでもあり、印象に残っています。

 

 私は今回、初めてパラ駅伝というものを知り観戦しましたが、絶えず実況中継があり、大まかな状況を理解しながら観戦できました。様々な年齢・障害の方が1つのチームとなって競技をすることや、パラスポーツの競技があんなに大きな会場で行われていることに驚きと共に感激しました。また、芸能人の方々が、各区間ごとに設定された方法で走るというのも印象的でした。

 今回、パラ駅伝当日を迎えるにあたっては、ボラサポの方や学校の方に説明をしていただく機会が2回あり、不安もなく万全の体制で当日に臨めました。

 しかし、当日は打ち合わせと異なる点もありました。例えば、入場レーンの各グループに分かれた時に、自己紹介をしていたところもあればしなかったところもあったり、また物や人の配置が十分に確認しきれないうちに、お客様の入場が始まったり、といったことが見受けられました。こうした時に、臨機応変に対応できるかどうかが大切だと感じました。

 どれだけ打ち合わせや研修を重ねても、本番はシミュレーション通りに進まないこともあります。そうした時、周りの状況や人の動きを冷静にみて、また周りの人とコミュニケーションを取りながら、自分がどうすべきかを判断する力が自分には必要だと思いました。

 東京2020大会では、ボランティアの方の人数も、大会の規模も今回とは異なり、より多くの人と関わり、仕事内容の種類も多くあります。急な変更にも対応でき、落ち着いて作業を遂行できるように努力することが、私自身の行動の幅を広げることにも繋がると感じました。

 今回、視覚障害者のボランティアに対するサポート体制が非常に整った中で活動ができ、楽しく充実した1日を過ごすことが出来ました。こうした機会を与えて下さった学校関係者・イベント関係者の皆様や、当日一緒に活動してくれたボランティアの皆様方のお陰です。本当にありがとうございました。またこうした機会があればぜひ参加したいと思います。

 

 

パラ駅伝のレポート記事はこちら