Column

平昌冬季パラリンピック大会における
ボランティア現地視察リポート(全3回)

2018年3月9日~18日まで韓国で開催された、第12回冬季パラリンピック平昌大会。49の国や地域などから約570選手が参加し、冬季大会としては史上最大規模となった大会を支えたのは20カ国を超える各地から選ばれた約5,800人のボランティアたちだ。いったいどんなきっかけで参加し、実際にどんな経験や感想をもったのだろうか。彼らの声は、2020年東京大会を控えた私たちに貴重な気づきを与えてくれた。全3回のシリーズでお届けする。

vol.3

「地元だから」をきっかけに知った、ボランティアの楽しさややりがい

大会ボランティアを行う動機や理由はさまざまだ。「オリンピックやスポーツが好き」「応援している競技や選手がいる」「日常的にボランティア活動をしている」……。十人十色の中で代表的な一つは、「地元で行われる国際イベントの成功に、少しでも関わりたい、役立ちたい」という意欲だ。
スケートやアイスホッケーなど主に屋内の氷上競技の会場となった江陵(カンヌン)市出身の主婦、ナンスーク・キム-ピンテロさん(Namsook Kim-Pintello/53歳)もその一人だ。1993年の米国留学をきっかけに国際結婚し、今は同国フロリダ州に家族(夫、一男一女)と暮らす。ボランティア経験もスポーツ経験もそれほどなく、オリンピック観戦もほとんどなかったが、「韓国語と英語の通訳ならできる。故郷の力になりたい」と応募した。
数年ぶりの里帰りも兼ね、オリンピックとパラリンピック両大会で長期に活動。フロリダに家族を残し、7週間も家を空けるのは結婚以来、初めてのことだった。「子供たちから、『ママの手料理が恋しい』とメールがよく届く」と苦笑しながらも、「毎日が充実。思い切ってチャレンジしてよかった」と話す。
担当したのは、ある国際団体の役員付通訳で、式典や試合、会議などに同行し、バイリンガルと土地勘を活かして活躍。初めて観戦したパラリンピックでは、「パラアスリートたちの懸命な姿に、感動して涙がでました。特に、視覚障がい選手がガイドの声を頼りに高速で雪面を滑走するアルペンスキーにはビックリ。写真に撮ってアメリカの家族にすぐ送りました」と振り返る。「2020年も、パラリンピックだけでもボランティアができたら。今から日本語も学ぼうかしら」。ボランティアのやりがいに目覚めたという。

仁川国際空港のインフォメーションデスクで活動中の大学生のキョン・フーさん
仁川国際空港のインフォメーションデスクで活動中の大学生のキョン・フーさん。
自分の能力を試し、経験を将来の糧に

大学生のキョン・フーさん(Kyung Hur/21歳)も、「地元で行われる貴重な機会」とボランティアに挑んだ一人だ。応募時点では競技会場での選手サポートを希望したが、配属されたのは仁川国際空港のインフォメーションデスク担当だった。仁川市在住だったことと専攻する英語力を見込まれのかもしれない。
首都ソウル市からほど近い仁川国際空港は平昌大会の空路のメインゲートだ。平昌や江陵にある競技会場方面に向かう高速鉄道の始発駅やシャトルバス乗り場なども併設されており、選手団や海外からの観客の大半が往来する、「大会の玄関口」だった。
「大会会場からは遠いけど、結果的に満足しています。だって、韓国に到着したばかりの選手たちに、最初に会える場所だから。母国を気に入ってもらえるように、笑顔で誠意をもった応対を心がけています。先日、テレビで観たことがあった有名な外国選手のお手伝いができて嬉しかったです」と、満面の笑顔で答えてくれた。

珍富駅の都市ボランティアとして交通案内や英語通訳を担った高校生のチェ・ドンファンさん。
珍富駅の都市ボランティアとして交通案内や英語通訳を担った高校生のチェ・ドンファンさん。

高校生のチェ・ドンファンさん(Choi Don-Hun/19歳)は学校の関係で短期間しか活動できなかったので大会ボランティアは諦め、高速鉄道が停まる珍富(ジンブ)駅での都市ボランティアに挑戦した。同駅はスキー会場のある平昌地区への最寄り駅で、シャトルバスセンターも兼ねる。平昌地区は韓国屈指のスキーリゾート地だが、山沿いの地方都市であり、韓国人でも大会観戦が初訪問という人も少なくない。
「将来は、大好きな英語を活かせる仕事に就くことが夢です。今回はその一歩として都市ボランティアに応募しました。生まれ育った平昌という町に恩返しができるよう、外国人はもちろん、韓国の人にも平昌をPRしたい」と意気込んでいたチェさん。「2020年はたぶん大学生になっているので、今度は大会ボランティアができたらいいな」。意欲さえあれば、チャンスはこれから何度でもあるはずだ。
お話を聞いたボランティアの多くはそれぞれの目的や意義をもち、充実した活動を行っていたが、一方でボランティア運営に対する課題を口にする人たちもいた。例えば、情報伝達に関して、「タイミングがギリギリ」「韓国語のみで外国人には伝わらない」など。また、「忙しいのに人手不足で、残業もある」「忙しくない時間帯は手持ち無沙汰だった」など人員体制の問題点も浮き彫りになった。
こうした現場の声はどれも貴重なデータだ。良いものは倣い、課題点は検討し、2020年東京大会をよりよいものにするために、しっかりと活かしていきたい。

(文・写真:星野恭子)

急な気温上昇で雪解けが進み、水浸しになった道路の整備を行うボランティアたち
急な気温上昇で雪解けが進み、水浸しになった道路の整備を行うボランティアたち。