JOURNALジャーナル

【#withコロナ特別編】
障害者のリアルを知る⑤
<前編 独立行政法人国際協力機構(JICA)北海道センター 研修業務課職員、東京2020大会共通研修講師
石田由香理さん>

Interview

2020.12.07

視覚障害者には逆に不便にもなるテクノロジーの進歩

【withコロナ特別編】障害者のリアルを知る、三人目は独立行政法人国際協力機構(JICA)北海道センター 研修業務課職員、東京2020大会共通研修講師である石田由香理さんです。

幼いころ病気で全盲となり、日常生活では白杖を使いながら北海道で生活しています。このコロナ禍で感じたことなどをお話ししていただいています。

※インタビューの実施は2020年9月です。9月時点での想いや考えについてまとめています。

 

見えないのに… 進むデザイン重視のオンライン研修

 

――現在このコロナのせいで、生活が一変している人も多いと思います。石田さんにはどのような変化がおありでしょうか――

石田さん
良い点と悪い点がありますね。在宅勤務が増えていますが、これが冬だったら利便性はとても上がったと思います。北海道での雪の中の通勤はとても大変なんですよ。

 

――点字ブロックが雪で消えてしまうといったことを以前お聞きしたことがあります。――

石田さん 
そうなんですよ。それはとても大きいですね。また今までは在宅勤務という概念がなかったので、それが当たり前にできるようになったのは利点ですね。

ただ不便なのは、オンライン会議の際に、映像や画像が重視されるようになってきています。JICAの研修も今年や来年はオンラインで研修をしようという話も出ています。

そうすると、動画づくり、映像、デザインの面が重視されることになってきます。見えない私にはどうしようもない状況になってしまうんですよね。

あとは各自がいろんなツールを設定しなきゃいけない状況が多くなっています。そういうアプリやツールなど諸々含め、音声読み上げだけで理解していくというのは、正直ついていくのが大変ですね。

その場所に同僚などが一緒にいればサポートも受けられるのですが、それができないのも不便に思いますね。

 

――リモートでは、視覚からの情報が増えていると感じますか?――

石田さん 
そう思います。音声だけだと情報が把握しづらいものが増えたと思います。

 

――逆にリモートでは、音声が中心になった印象もあり、利便性が上がったとも思ってましたがそうではないんですね?――

石田さん 
私たちが行う研修ではグループワークが多いんです。対面式であれば、付箋を貼ったりしながらグループワークなどするんですが、それがオンライン上のボードに書き込んでいくようになっているんですよね。

それが音声対応されていなかったりする部分もあったりして困ることもあります。

 

オンラインでは空気感が伝わらない

 

――札幌で共通研修の講師をしていただいたときに、まるで観客が見えているかのように空気を読みながら、研修を行っているように見えたのが印象的でした。そういう空気感もリモートだと難しいんでしょうか。――

石田さん 
リモートでのインタビューとか講演も引き受けることもあるんですが、こっちは電話と変わらないので、空気感や人の反応が読みづらいんですよね。

そもそも画面上に何人いるのかが頭ではわかっていても、伝わってこないんです。まだ直接会っていれば、なんとなく相手の視線であったり、雰囲気はわかることがあるんです。実際には見えていないんですがわかるんですね。

 

マスク着用の人には声をかけづらい?

 

――その感覚はすごいですね。先ほど、出勤も始まっているとお聞きしました。今までと違い声をかけられる頻度が減ったりしていますか?――

石田さん
職場は徒歩圏内で近く、声掛けの頻度についてはまだわかりません。でも、声をかけられるケースは減るんじゃないかと心配しています。

理由は二つあります。マスクしているから向こうは私の表情が見えないんですよね。なんとなくですが、マスクしているときの方が声をかけられる率が低いんですね。

多分相手がどういう表情しているかわからないから、声をかけにくいんだと思います。もう一つは、コロナでなんとなく近づいてはいけない雰囲気。

下手に声かけてよいのかなというのも含めて、声掛けが減るんじゃないかと心配しているところです。

また、今までオフィシャルに案内を頼めていた駅や店などで、今でも案内を頼んでよいのかに非常に気を遣います

「ソーシャルディスタンスをしているので従業員に声をかけるのはお控えください」といった館内放送をしているところもあるんです。

そういわれると、案内を頼んじゃいけないのかなという気がしませんか?いままで当たり前にできていたことも頼みづらくなっています。なので、友達と行こうかなと思いますね。

 

お金の支払いなど日常での困り事

 

――視覚に障害のある方は触るという事が一つ重要な感覚だと思います。スーパーなどで触ってものを確かめるとかあると思います。そのあたりの影響は何かありますか――

石田さん 
戸惑うのがレジでのお金の受け渡しです。これまでと比べて、受け渡しのパターンが増えているんですよ。

今までなら、手に直接お金を渡してくれたんです。それが今は、ほとんど直接受け取ることはないんです。

トレーが置いてあるパターン、トレーが固定されているパターン、トレーを使って渡してくるパターンと、お店によって受け渡し方法が違うんですよね。

クレジットカードでの支払いも変わってきています。今までは手の届くところまで、機器やサインする紙などを用意してくれていたんですが、今は、「自分で機器に差し込んでください」という形になっていることが多いです。

他の視覚障害の人もこういったお金の支払い関係は困っていると聞きますね。あとレジに、飛沫防止の透明シートが設置されているところもあるようですが、弱視の人は、透明シートを挟むと見えなくなるとも言っていました。

ありがとうございました。仕事の仕方の変化による悩み、日常生活を送る上での困っていることなどを石田さん自身の経験からお話をしていただきました。後編では、テクノロジーが進歩する一方で、視覚障害者にとって困る事、サポートの面で戸惑っている事や、ボランティアの方へのメッセージなどをまとめています。

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