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Parafes 2018 ~UNLOCK YOURSELF~ ボランティアインタビュー

昨年11月に開催された、パラスポーツと音楽の融合イベント「Parafes 2018 ~UNLOCK YOURSELF~」は、同時開催のパラスポーツ体験イベント「i enjoy ! パラスポーツパークin Parafes 2018」とあわせて190人のボランティアが参加した。イベントを裏側でただ支えるだけではなく、新たな楽しみや気づきを得たというボランティアに、参加のきっかけやそれぞれの楽しみ方を聞いた。

◆新しい世界への扉を開いた会社員・岡村聡子さんの場合

「障がいのある人も、ない人も、スポーツを通してつながる。こういう世界もあるんだ、と知ることができていい刺激をもらっています」

そう声を弾ませたのは、パラ卓球の体験ブースを担当した岡村聡子さん(31)。生まれつき四肢障がいがあるが、実は、社会人になるまで同じ身体障がいのある人と交流した経験がなかったという。

この日は、体験会とはいえ、ずっと興味があったというパラアスリートのパフォーマンスを初めて身近で見た。「私も体験してみたけど、ラケットが届きにくい場所があったりしてすごく難しかった。やっぱり世界で活躍する選手はすごい!」と、世界選手権に出場した八木克勝選手やリオパラリンピック日本代表の吉田信一選手のプレーに触れて感激した様子。

「パラアスリートはもちろんのこと、障がいのある人や健常者……いろんな人と話をすることができてすごく楽しい時間でした。パラスポーツのボランティア、ぜひこれからも続けようと思いました」

ボランティアの入り口は、勤務先である旅行会社JTBの一員として参加したパラスポーツ運動会だった。「ボッチャは純粋に楽しくて夢中になったし、シッティングバレーボールはエキサイトしすぎて翌日は膝があざだらけになったほど」。これをきっかけにパラスポーツのイベントに参加するようになり、今まで知らなかった障がいのある当事者の考え方に感銘を受けたり、パラリンピックムーブメントに関わる人たちと接したりすることで、新たな気づきを得たという。

「ダイバーシティとは何なのか、社会がどうなったら障がいのある人の選択肢が増えるのか、以前よりしっかり考えるようになりました」
そう語る岡村さんの表情は充実感に満ちていた。

 

◆スポーツが好きな会社員・森元準史さんの場合

イベントが行われたのは連休の初日。大阪から上京し、残りの休日は友人と会ったり、余暇に充てたりしようと計画を立てたのは、東京2020オフィシャルサポーター(人材サービス)であるパソナグループ勤務の森元準史さん(23)だ。

「もともとサッカーをやっていたこともあり、スポーツのボランティアに興味がありました。東京オリンピック・パラリンピックに何かしら関われたらと考えていたところ、会社からの案内でボランティアを知ったんです。パラスポーツはオリンピック競技と違って体験できるチャンスは少ないし、交通費や宿泊費は出なくても、周りの理解があるときこそ参加しない手はありません。実際に参加してみて、自分の知らないことをたくさん知ることができてすごく勉強になりました」

この日は視覚障がい者柔道体験ブースを担当。実に楽しそうに組み合う選手と触れて「パラスポーツは特別なものではなく、スポーツとして楽しめるものなのだ」と感じたという。

「パラスポーツの選手に話を聞くと、日本でスポーツを続けるのは環境面で苦労があって、たとえば車いすの選手なら、スロープやトイレが整備されていない場所で練習していたりとか、競技用の車いすを使うから運搬にサポートが必要だとか、実際に選手と触れるからこそ知れることがたくさんあるんです」

選手たちのリアルな声を聞き、より一層ボランティアへの関心が高まったようで、多くのイベントが行われている東京・大阪だけでなく、「地方のイベントや大会のボランティアにも参加したい」と力を込める森元さん。「コツコツと小さなことで貢献していけたらうれしいですね」と笑顔で語った。

 

◆聴覚障がいのある大学生・池田光岐さんと河野赳大さんの場合

手話通訳者とともにボッチャのブースを担当したのは、聴覚障がいのある亜細亜大学学生の池田光岐さん(19)と東洋大学学生の河野赳大さん(18)。

「ボッチャはろう学校で体験したことがあるけれど、この機会により深くルールを知ることができてよかった」と充実感をにじませる池田さんは、障がいのある当事者がボランティアとしてイベントに参加する意義をこう語る。

「オリンピック・パラリンピックを迎えるとなると、英語やロシア語やさまざまな言語ができる人が必要になる。だからこそ、外国語だけではなく、身振り手振りで伝えることも必要になるのではないでしょうか」

今回、ボランティアを経験してみて、「何かを伝えようとするとき、伝わる速度にズレが生じることもあるけれど、気持ちがあればなんとかしようと努力するもの。だから気持ちが一番大事だと思いました」と実感を込めて語った。池田さんの話に、深く頷いていた河野さんは、この日が初めてのボランティア。「参加する前は正直、自分に務まるか不安だった。でも実際にやってみて積極的になることが大切だとわかりました」と語った。

河野さんは続ける。
「これまで『ろう(聴覚障がい者)の世界』だけにいたと気づきました。今回、いろんな障がいのスポーツを知ることができたし、もちろん健常者ともたくさん交流できて自分の中の何かが変わったように思います。これをきっかけにしてスポーツのボランティアに積極的に参加していきたいです」※手話通訳としてご協力いただいたお二人のご友人(右端)と河野さん(中央)と池田さん(左端)。

◆ボランティアを学ぶ大学院生・渡部啓亮さんの場合

初めてボランティアを経験する人も多くいた一方で、災害ボランティアから、東京を拠点とするプロサッカークラブ「FC東京」のリーグ戦や「さいたま国際マラソン」などのスポーツイベントを支えるスポーツボランティアまで、多くのボランティアを経験しているベテランの姿もあった。

文教大学の大学院でスポーツボランティアを専攻している渡部啓亮さん(24)は、会場の整理・誘導を担当し、視覚障がいのある来場者に足元の段差を知らせたり、車いすユーザーにエレベーターの場所を案内したりした。

渡部さんは、スポーツボランティアの魅力を「選手との距離が近いし、自分がスポーツに参加している感覚で楽しめる」と自らも楽しそうに話す。パラスポーツのボランティア経験はまだ数えるほどだが、大学の講義で陸上競技のパラリンピアンと知り合ったことがきっかけでスタジアムにも足を運ぶようになった。「僕らには到達できないような競技性の高いスポーツとして興味を持った」といい、「普段なかなか接する機会がないパラスポーツこそ、近くで関わって選手のすごさを感じないともったいないと思います」。

2020年はオリンピック・パラリンピック両方のボランティアを希望しているという渡部さん。「今後も専門知識を活かして、人のためになるような活動ができたら」と話し、瞳の奥を輝かせた。

 

インタビュー&文:瀬長あすか
写真:岡本寿