JOURNALジャーナル

【#withコロナ特別編】
「障害者のリアルを知る②」
<後編 東京大学先端科学技術研究センター准教授 熊谷晋一郎先生>

Interview

2020.12.03

前回の前編では、経済などの話も含め、大きな視点からのお話を主にまとめました。

今回は、このコロナ禍でのソーシャルディスタンス確保の中、どのようにして障害者へのサポートをすればよいかなど、具体的な話をまとめています。

医療資源をどのように分配するべきか??

 

――障害のある方のほうが、コロナに感染した時に健常者より影響が大きいと思います。当然、このコロナ禍でもサポートが必要だと思いますが、一方でサポートを受ければそれだけ感染のリスクは高まってしまいます。そのあたりは先生の中でどのように整理していらっしゃいますか?――

熊谷先生
ここで申し上げるのは、一人ひとり事情が違うということと、もう一つ強調するのが資源は有限であるということです。

資源を分配するには大きく2種類のルールがあります。

貢献原則と、必要原則の2種類です。貢献原則は、たくさん資源を生み出した人にその分多くの資源を分配するというものです。

もうひとつの分配のルールは必要原則です。必要原則は必要性の高い人から分配するというルールです。ただ、今は国家の力が弱くなり市場の力が強くなっています。

それゆえに貢献原則の割合が増しています。とはいえ、医療資源は必要性に基づいて分配されなければならない。だから重度のコロナ感染者は入院できる、軽症の人は入院できずに、自宅待機やホテル待機となる訳です。

限りある資源を必要原則によって分配していのです。稼げる可能性ということで分配してしまうというのはおかしく、やはり医療資源は必要原則で分配しなければいけない。

だから障害の重い人がコロナにかかったら重症化しやすいので、重度の障害を持っているコロナ感染者に優先的に医療資源を分配しなければなりません

しかし、必要原則を基本としながらも、貢献原則の論理を垣間見ることがあります。

高齢者や障害者は生産性も低いので、優先的に分配しなくてもよい、という考え方です。医療資源の分配において、貢献原則の論理が一部導入されるのは非常に大きな問題です。

 

――優生思想的な考えとも言い換えられますね?――

熊谷先生
おっしゃる通りです。優生思想に反対してきたというのは、障害者の長い歴史で大事にしてきたことです。

そこははっきり伝えないといけない。医療、教育、福祉は尊厳ある暮らしに直結しますので、そこは必要原則で行われなければならず、国家の機能が非常に重要だといえます。

市場の論理を止めてはいけないが、分配の論理を整理するということも大切です。

 

どうやって障害者をサポートすればよいの?ソーシャルディスタンスは?

 

――個人のレベルで話しをしますと、今までは街で困っている人がいたら、積極的に声をかけることが重要だと考えてきました。まず何が必要なのか聞いて、コミュニケーションを大切にし、一方的な押し付けではなく、相手のニーズに応じたサポートをすることを心がけてきました。このコロナ禍でもそのスタンスは変える必要はないと考えていますが、如何でしょうか ――

熊谷先生
それは変わらないですし、より一層求められるかもしれませんね。

以前よりも相手が何を欲しているのかが一層わからなくなると思います。聞くということがますます大事になってきます。まずニーズを聞くということがとても大切です。

あとは聞き方でしょうね。ソーシャルディスタンスを保ちながら聞くにはどうすればよいか。

特に視覚障害の方ですよね。聴覚障害の方であれば遠くから合図はできるかもしれないですが、視覚障害の方に声掛けをするときにはどうしても接触や近くで話すことが必要です。

何かテクノロジーを使って困っているときに周りの人に助けを求めたり、周りの人から声掛けできる仕組みを確立できないかと思います。

 

――声掛けというところでは、工夫が必要ですね。当事者の中にも感染防止のために、声をかけられたくないとか、触られたくないと思っている人はいらっしゃいますよね?――

熊谷先生
当事者でもそういう風に思っている人はいるかもしれませんね。そこはエチケットとして、マスクをつけたうえでのジェスチャーとか、そういった配慮は必要だと思います。

 

まず、障害者のリアルを「知る」という事

 

――ボランティアという立場で、今、私たちにできることは、どのようなことでしょうか?――

熊谷先生
まず知るということですよね。知った上で次に何ができるのかということです。知れば知るほど自分にできることがイメージしやすくなると思います。

ボランティアの人がすでに持っている、技術やノウハウも違うと思います。それぞれの観点から私が考え付かないようなソリューション、アイディアも生まれるかもしれない。

ボランティアスピリットを持っている人もたくさんいるので、いろいろな困りごとを聞いたうえでボランティアの中でコンペをするなどもよいかもしれないですね。みんなでソリューション、アイディアを考える。それが大きなムーブメントにもなるかもしれませんし、非常に魅力的だと思います。

 

――東京2020大会までの約1年、コロナ禍においてもボランティアにできることはあるということですね。どういう困りごとがあるかを皆さんに知ってもらい、その上で何ができるのかを考える。そしてコミュニケーションを取り続ける。私たちは、このことを一人でも多くの人に訴えかけていかなければいけないと強く感じました。――

様々な視点から熊谷先生にお話をしていただきました。まず、障害当事者の困り事やニーズを「知る」ということ。またコロナ禍でも感染予防に配慮しながら、押し付けにならないサポートをしていくことが重要だと、改めて確認ができました。熊谷先生ありがとうございました。

今後も人にフューチャーした#withコロナを載せていきます。どうぞよろしくお願いします。

 

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