JOURNALジャーナル

【#withコロナ特別編】
「障害者のリアルを知る①」
<前編 東京大学先端科学技術研究センター准教授 熊谷晋一郎先生>

Interview

2020.12.03

コロナ禍を過ごす障害当事者の声を聞く新シリーズ

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの日常生活を一変させました。

それは、障害のある方にとっても例外ではありません。このコロナ禍において、障害のある方が、何を感じ、どのようなサポートを必要としているのか。障害当事者の方々の声を聞くインタビュー企画を、#withコロナ特別編としてスタートします。

初回は当事者研究の第一人者である東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎先生です。

今回は、脳性まひの当事者でもある熊谷先生に、コロナ禍における生活の変化や新たな課題について、経済活動の再開との関係性も交えてお話しいただきました。

※インタビューの実施は2020年6月です。6月時点での想いや考えについてまとめています。

 

障害当事者の課題、ボランティアに今できる事

 

――このコロナ禍において障害のある方も新たな課題や悩みを抱えていると思います。そのような状況でボランティアとして何ができるのか、ボラサポとして何ができるのか、を考えていく必要性を感じています。――

熊谷先生
課題という面で考えると、リモートワークの普及によって通勤しなくて良くなったなど、障害が減った部分もあります。ただ一方で、障害が増えた部分ももちろんあります。

例えば聴覚に障害のある学生にとってのオンライン授業などです。

教室の様々な周辺状況を頼りに授業を理解していた生徒や、聴力には問題ないが音声認識が難しい、あるいは失語症まではいかないが文法読解が難しい、そうした今までだったら見逃されていた困難さを持つ学生が、オンラインになったら全然授業についていけてないということが明らかになりました。

また、ソーシャルディスタンスとして、2メートルの距離を空けることが推奨されています。ただ、そうすると生活ができなくなるマイノリティの人もいます。

感染予防が社会の全てではないのです。「感染はしなかったけれど、生活ができない」というのは論外で、経済活動の再開は必須です。その延長線上に、経済活動と感染症対策を両立させるための工夫が必要です。

生活様式が変わったことで生まれた新しいニーズを、まだ誰も把握しきれていないと思います。もう少しきめ細やかにデータをとって、生活スタイルを構築する必要があるでしょう。

そのために情報が圧倒的に足りていません。

障害のある方が今どういうことに困っているのか。オンラインでお伺いする、あるいは介助者の人にも話を聞いたりするなど、そういったボランティアはとても大切だと思います。今は、何か行動をする前に、まず聞き取り、情報を得ることが大切ですね。

 

――まず情報の収集ですね。このコロナ禍では私たちも外に出られなくなり、改めて障害は社会の側にあることを感じ、ダイバーシティ、多様性への理解の重要性を認識させられました。――

 

コロナ禍での周りとの距離感

 

――今先生も街に出られたり、通勤の機会は少なくなっていると思いますがその中で、コロナが感染拡大する以前と比べて、声をかけられることが少なくなっていたりとか、周りの人との距離感は感じますか?――

熊谷先生
公共交通機関の利用では少し感じることがあります。電車に乗るときは、車いすなので、渡り板を駅員さんに出してもらいます。

その時の距離感が以前と比べて少しだけ遠いなと感じますね。

基本は、駅員さんもアクリル板の向こうで接客をしていますが、渡し板を設置するときにはそこから出なければならないので、注意している感じは伝わってきます。

飲食店などのお店に入るときも少し感じますね。別に車いすだからというわけではないんですが。

――それは嫌なことと感じていますか?あるいは仕方ないなと思いますか?――

熊谷先生
仕方ないことだなと思えていますね。少し別な話にはなりますが、私は電動車いすを使用しているので、その分だけ他の人より表面積が大きくなります。

医療者の視点では、車いすが清潔であるかが気になるポイントです。

視覚障害の人の白杖もそうですし、生活に必要不可欠のものを、どう清潔に保つのか。できれば消毒する必要がないような器具、補助具をすぐにでも作る必要はあるのかなと思います。

 

――消毒する必要がないというのがベストな方法ですね――

熊谷先生
そうですね。補助具を使っていると飛沫物を付けられる確率は多いと思うので、難しいとは思いますが早急に対処しなければならない問題です。

 

コロナ対策と経済活動

 

――以前から先生はよく自立というのは依存先を増やすことだ、とおっしゃっておりました。このコロナ禍だとやはり依存先というものが限定されているという感じはありますか?――

熊谷先生
そうだと思います。経済活動を例に取ると、経済活動も独占寡占を禁止したりていることからも依存先を広める活動だと言えます。

経済活動を再開するという事と依存先を広げるという事はイコールで結び付けられます。わたしがすごく危機感を感じているのは、依存先が半世紀前に戻るのではという危うさです。

色々な事件などの影響から、2、30年前には脱家族、脱大規模施設という依存先を分散する方向が既定路線になりました。ところが、今回のコロナでその時代に戻りかねないと危機を感じています。

依存先を家族でもない、施設でもない人に広げていくという営みが、感染症のポリシーとバッティングするようになってしまいます。

ただバッティングしたからと言ってあきらめるのでなく、経済の再開、そして依存先を広げる事は、人間の尊厳ある暮らしにとって譲れない最低ラインだと思います。

いかに感染症が蔓延したとしてもそこは譲れない。

依存先を分散する方向と経済を再開する方向と両立する形で、感染症対策をやっていかなければなりません。難しい連立方程式から逃げてはいけないのです。

 

――今のお話は障害の有無にかかわらず当てはまることだと思いました。例えば、学校や保育園が閉まってしまうと、依存先が家族だけになってしまって、結果的に虐待が増えているという報告もあります。弊害は色々なところで起きていると感じています。コロナ禍で依存先が家庭だけ、もしくは依存できる人が誰もいないというケースも多くあるのではと推測されます。依存先を増やすのと、経済活動の再開がイコールというのは新しい気づきでした。――

この前編では経済などの話も含め、大きな視点からのお話を主にまとめました。

後編では、このコロナ禍でのソーシャルディスタンス確保の中、どのようにして障害者へのサポートをすればよいかなど、踏み込んだ具体的な話をまとめています。

Share!
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE