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ボランティアが生む貴重な経験
~ラグビーワールドカップでの活動から~

2020.11.30

昨年、日本中に感動を呼んだラグビーワールドカップ。その大会の成功には、ボランティアの活躍も貢献していました。

ボラサポでは、大会で活動したボラサポスタッフ3名による座談会を大会後に開催しました。大会から1年を迎え、昨年の大会を振り返ると共に、その経験を来年の東京2020大会に生かす意味も込めて、ここに掲載します。

(ファシリテーター:日本スポーツボランティアネットワーク 澁谷茂樹事務局長)

昨年の成功を、東京2020大会へ

写真右から
・澁谷事務局長
・渡部啓亮(日本財団ボランティアサポートセンター 事業部)
・多胡早織(日本財団ボランティアサポートセンター 事業部)
・園部さやか(日本財団ボランティアサポートセンター 事業部マネージャー)

澁谷
今日はよろしくお願いします。まずは、皆さんの活動した配置と役割をお願いします。

多胡
東京会場で、狛江駅でのシャトルバス乗り場でのお客さんの誘導や、東京スタジアム最寄りの多摩駅からのラストマイルでのシャトルバスの誘導や、会場入り口前のでお客さんのお迎えやお見送りでした。調布駅でもやりました。

渡部
同じく東京会場で、東京スタジアムで会場内でのお客さんの案内でした。初日は座席案内で、二日目以降はコンコースでトイレやお店に並ぶお客さんの列を整理したり、写真撮影パネルを持っての賑やかしですね。6日間やりました。

園部
私も東京スタジアムで、七日間やりました。会場内での観客でした。もともとは会場運営サポートで、開会式のものを運んだりしました。

事前の研修も楽しくて印象的

澁谷
事前の研修では、面談などを兼ねた「ボランティアロードショー」、任意の各エリアでの「オリエンテーション」、eラーニング教材の提供、リーダー研修や役割別のトレーニングや、活動場所の「ベニュートレーニング」などがありました。どんなものが印象に残っていますか。

園部
ロードショーでの一体感や高揚感はとても記憶に残っていますね。グループアクティビティは楽しかったです。やっている後ろにスタッフの方が立っていたので「チェックされてるのかな」と妙に緊張しましたが()

渡部
ロードショーの会場で、最初はどの方も緊張した表情でしたが、アクティビティを経て、距離が縮まったのを感じました。

役割別研修ではトラブルがあった際の対応を想定してみるという時間もありましたが、活動内容の全体像がわからない中で、けっこうイメージが難しかったですね。

澁谷
全体像があるとよりイメージしやすいのかもしれませんね。

多胡
実際にラグビーボールを触ったりする時間もありましたね。オリエンテーションでは、映像で「一生に一度」というフレーズが印象的で、ワールドカップが来るのが楽しみになりました。

あとは、通常とは逆の、自分が負けるようにする後だしじゃんけんをやって、固定観念を持たないようにしよう、というオリエンテーションも印象的でした。

澁谷
オリエンテーションでは、全体の説明をする人のほかに、その開催地の担当者も説明に立っていて、そこは好感が持てましたね。事務的ではなく、一緒に頑張りましょうという想いが伝わりました。

渡部
そうですね、担当の方の顔が見えるのはよかったと思います。

澁谷
eラーニングの映像内に登場している担当者も、現地で話していましたね。

多胡
話し方も工夫している感じで、一緒に大会を盛り上げようというのが伝わりました。

会場周辺の情報など、事前準備が活動の助けに

澁谷
一方で、大会でのボランティアに臨むにあたってご自身で準備したことはありましたか。

多胡
まずは、自分が楽しむという思いを持って参加しました。あとは直前まで語学留学でイギリスにいて、大会序盤は向こうで見ていました。ラグビー発祥の地であるイギリスの人たちも、とても盛り上がっていたんです。ただ、日本に帰ってきたら、さらにそれ以上で、予想以上に盛り上がっていたので、とても気持ちが高まりましたね。イギリスでは、英語を本番で使えるようにと思って現地での時間を過ごしました。

渡部
普段、サッカーのFC東京のボランティアをしていて、今回の活動場所だった東京スタジアムはホームともいえる場所だったのはすごく役立ちました。FC東京のボランティア活動をしているときも、トイレとかお客さんに聞かれそうな場所とか、お客さんにどうやったら喜んでもらえるかとか、イメージしながら活動していました。今回のラグビーでの活動では外国人の方も多く来ていましたが、瞬時に英語で反応できて、事前の想定が生かせたかなと思います。

園部
研修で隣になった人と話したのが、会場周辺のおいしいお店とか知っておいた方がいいよねということでした。あとは、名所とかおすすめの場所を聞かれたときの対応ですね。浅草寺とか、外国人の方に喜ばれそうな場所について調べました。

あとは、初日の活動をやって、「列を折り返す」とか、ちょっとした表現だけどなかなか英語で出てこない言い回しに気づいて、英語の先生に聞いて改めて確認しました。

澁谷
外国人の方に列に並んでもらうのは結構難しいですよね。

園部
列に並んでいるのが珍しいらしく、列を写真に撮っている外国人も多かったですね。

澁谷
逆に、不安なことはありましたか。

園部
どんな人と一緒に活動するのかは気になりましたね。仲良くなれるか、とか。

渡部
東京会場でのベニュートレーニングのスケジュールが合わずに、横浜で受けたので、東京スタジアムで活動する際に少し不安でした。でも、行ったらなんとかなるかなと()

多胡
ボランティアに臨むにあたっての心構えとかを動画で見たのは、不安を和らげてくれました。

業務の改善で、日に日に増す信頼

澁谷
さっきの、初日の経験を生かして翌日以降に備えた話でいうと、日が経つにつれて運営が改善されていったという感想は他でも聞きました。

園部
担当した会場内での活動エリアが広く、タスクも最初は多かったのですが、日ごとに業務内容が精査されました。終礼で共有した内容が翌日以降の業務に反映されていった感じですね。それによって、スタッフとボランティアとの信頼関係が生まれました。

澁谷
売店などの待機列もすごかったみたいですね。

渡部
そうですね、私はトイレの待機列を整理する役割をしましたが、日ごとにルールが決まっていきました。階段を上がって右に列を伸ばしていく、とかですね。それぞれの場所で並べ方を統一していって、オペレーションが揃っていきました。

園部
売店売り場への列とトイレへの列が混雑して座席への通路をふさいでしまうので、そこを整理するために新たにボランティアを配置するとか、ポジションも日々改善されていきましたね。

澁谷
実際に業務の改善が見えると、やりがいにもつながりますよね。一方、多胡さんの活動場所は、スタジアム外でしたね。

多胡
私の活動した狛江駅では、ブースを作って試合の案内チラシを置いて、タブレット端末で試合状況を教えたり、市の作ったラグビーボール製のタワーが設置されていて、市も一体で大会を盛り上げていました。シャトルバスへの案内も行いました。帰りは声掛けやハイタッチをしてお見送りをしました。

リーダーも務めて、体調の確認や休憩を取るタイミングの調整、配置場所の交換などしていました。

やっている中で迷ったのが、リーダーとはいえ、どこまでこちらの判断で動いていいかですね。落とし物があったときも、近くの交番に届ける時に、個人で届けるのか、団体として届けるのかは迷いましたね。

外国人観戦客とのコミュニケーションの重要性

澁谷
外国人の観戦客も多かったと思いますが、コミュニケーションはいかがでしたか。ある会場では男性用トイレが混雑して、すいている女性トイレを男性が使おうとしていたケースもあったと聞きました()

園部
私のところでもありましたね。「むこうが空いてるじゃないか」と言われたので、「女性用だからダメだよ」と伝えました。そういった混雑している時に、きちんと説明できる英語力はけっこう大変だなと感じました。

渡部
女性用トイレにいかないようにチェックするボランティアも置くようになりましたね。

多胡
パブリックビューイングの会場で、立ち見禁止エリアで「立ち見禁止」という英語の掲示を持って注意を促していたのですが、今度は座って見始めてしまって(苦笑)。注意するのは難しいと実感しました。

園部
注意する時など、語学力が問われる場面は多かったですね。また、お客さんも酔っている人が多いから、なおさら通じにくかったです笑。

澁谷
ある程度の語彙力がないと、ハードネゴシエーションはできないですよね。

渡部
相手が言っていることはわかったんですが、なかなかうまく話せなくて。でも、その話せないことが強みになった部分もありました。相手の言い分を「ソーリー、ソーリー」と受け流したりとか()、ある種バカになってコミュニケーションを取りました。話せた方がよりよくコミュニケーションが取れたとは思いますが、話せないなりにもできたことはありました。

園部
それはありましたね。中国人留学生のボランティアさんも、日本語のコミュニケーションは五割くらいなんですが、手書きで絵をかいて地図で伝えてくれてましたね。

観戦客との交流もボランティア活動のよさ

澁谷
今の話のような、一緒に活動したボランティアや観客の方とかとの出会いやエピソードはありましたか。

園部
日本戦が負けた決勝トーナメントの試合後に本気で泣いているファンの方を見るとグッときましたね。会場全体の一体感を感じました。それに正直、日本がここまで勝ち進むとは思われてなかった試合で、外国人の観客も多かったんですが、みんなボランティアに声をかけて、日本チームの奮闘をほめてくれて、会場が一つになった気がしました。気持ちよさを感じましたね。

あと、日本人の方はどの試合でもみんなボランティアにおつかれさまと声をかけてくれました。すごく優しかったですね。

渡部
僕はフランスとアルゼンチンの試合が印象に残っていますね。終了間際までどちらが勝つかわからない接戦で盛り上がった試合でした。記念撮影用のフォトフレームを持っていたら、勝ったフランスのファン100人ぐらいが集まっているところでの写真を撮ったんですが、そうしたら、「お前も一緒に写ろう」と声をかけてくれて、一緒に混ぜて写真を撮ってくれて、とても心温まりました。

澁谷
あのフォトフレームはとても好評で、どこの会場でも行列ができていましたね。

渡部
あまり大きくなくて、これで写真盛り上がるのかなと思いましたが、でもあれを持っていると、よく声を掛けられて、とてもいい取り組みだと思いました。

澁谷
会場の装飾を背景にした写真はとても人気でしたね。ボランティアがなかなか休めないほどでした() ボランティアの配置場所も、トイレ前みたいな地味な場所と、そういう写真撮影のような楽しげな場所と、ローテーションとかに配慮があるととてもよかったかもしれないですね。

多胡
日本対南アフリカ戦の後のハイタッチはとても盛り上がって、外国人の方も日本頑張ったねと声をかけてくれて、涙ぐんでいる人もいました。そんないい大会にボランティアとして関われてよかったなと感じました。

澁谷
一緒に活動したボランティアはどんな人たちでしたか。

多胡
少人数のグループで、コミュニケーションがとりやすかったです。東京マラソンでボランティアに慣れている人も多かったですね。観戦客以外の、通勤している人にも「おつかれさまです」と声をかけているボランティアさんもいて、とてもいい取り組みだなと思いました。みんなこの一生に一度の機会を楽しんでいる感じで、毎回終了後にはみんなで写真を撮りました。

多種多様なボランティアが生みだすチームワーク

渡部
これまでのボランティア現場では、同世代でボランティアをする機会はあまり多くなかったんですが、今回は学生もけっこう多かったですね。中には、茶髪にピアスとか、とてもくだけた雰囲気の子も参加していました。どんな風にボランティアするのかなと思ったら、サークルの代表をしていて盛り上げがうまく、外国人とも臆せずにコミュニケーションをとって、雰囲気づくりがすごく上手でした。こういう子がいると、チームもすごく盛り上がるなと印象的でした。

いろんな特徴を持った人がいて、そんなチームでボランティアができてよかったなと感じました。

園部
私は盲導犬を連れているボランティアさんを見かけました。チェックインの担当で、ランチ券を受け取りにいくと、いつもニコニコしていて、隣で盲導犬が寝そべっていて、その風景が会場の雰囲気をとても和らげてくれていました。

澁谷
障がいのある方もできるボランティアの形ですね。

園部
そうですね、外国人の方も、年齢の若いひとも年配の方もいて、控室でいろんな人がいる光景がとても多様でよかったです。

澁谷
それぞれの体験から来年の東京大会につなげられる部分はどのあたりにあると感じますか。

園部
今回はボランティアのフェイスペイントがOKで、ボランティアのモチベーションアップにとってすごく効果的でしたね。ボランティアも楽しんでいいんだっていう雰囲気で、ボランティアの気持ちがとても盛り上がりました。

あとは、一つのチームは小さめの方がよかったかなと、20人くらいのチームで活動したのでそう思いました。多かったので、正直、名前が覚えられない方もいましたね。

澁谷
リーダーにもう少し権限や役割を与えて、任せてもよかったかもしれませんね。

渡部
ボランティアが楽しめるのがすごくいいことだと思いました。観客向けのアトラクションにボランティアが参加してもいいケースもありましたし、おまつりでしたね。

また、海外からも来た人の中にも障害のある方がいて、語学とか、そうした人のサポート方法とか、自分のスキルをもう一段階アップさせたいなとも感じましたし、自分のそういった経験を他の人に伝えるのも2020に向けては大切だと思いました。

多胡
活動内容がボランティア初心者でもやりやすい内容で、休憩も十分にあってよかったと思います。ただ、結構経験のあるベテランの方の中には、リーダーを任されても、どこまでの権限があるのかがわからず、物足りないと感じた人もいたようでした。そうした方々の経験を生かす体制があると、よりよい活動ができるかなと思いました。

澁谷
日々の振り返りを生かす体制が大切ですね。

今回の活動では、組織委員会の方も、特別な雰囲気づくりを意識したと言っていました。ラグビーW杯では、東京2020大会でいうところの都市ボランティアにあたる役割の人たちがとても多くて、ここに人がいなくてもいいのでは、というようなところにもボランティアがいて、それがラグビーW杯の空間を作り上げていたのではと思います。

園部
そうですね。組織委員会は、大会までのボランティアのトレーニングを通じて、一緒に楽しみましょうとか、仲間として共に大会を盛り上げましょうとか、そういうチームノーサイドとしてのコンセプトがしっかりしていて、それを機会ごとに伝えて、現場のスタッフもボランティアの人たちをリスペクトしていましたね。スポーツボランティアの皆さんを仲間としてとらえて、その次につなげていく、そのきっかけを今回のラグビーW杯が作ったのではと思います。東京2020大会でそれを完成させられるといいですね。そういう意味では、ビッグイベントが続くのは大きなことだと思います。

ボランティアユニフォームがコミュニケーションのきっかけに

澁谷
今回は会場までの道中でもボランティアユニフォームを着てくださいとの案内があったかと思いますが、声を掛けられることなどはありましたか。

渡部
東京会場まで向かう京王線の中で、ユニフォームを目印にして声を掛けられることはありましたね。あとは、疲れて会場に向かう車内で寝てしまって、あやうく会場の最寄り駅を乗り過ごすところだったのを、海外からのボランティアの方に起こしてもらったこともありました()

仲間意識の醸成としては、一つのツールになっていたと思いますね。

園部
私はボランティアからの帰りに何度も声をかけられましたね。「大変だったね」とか、「全国各地の会場を見に行ったけど、ここが一番良かったよ」と言ってくれる人もいました。帰りの電車を降りるときには「ボランティアさんおつかれさま」と言ってもらったりしました。道中で着ているのは最初は恥ずかしかったけど、慣れたら平気でしたね()

渡部
会場近くではいろんな人に声をかけてもらえて、あまり恥ずかしくなかったですが、家が会場から2時間以上かかって、家の近くでは何の服か知らない人も多いので少し恥ずかしかったです()

東京2020大会の時は、会場がより各地に広がるので、「おつかれさま」とか声をかけてもらえる範囲が広がればいいなと思います。

園部
おつかれさまとか声をかけてくれるのは、日本人、外国人関係なかったですね。みんなフレンドリーに声をかけてくれました。

多胡
これ、もらえるんですかとも聞かれました。あとは、他に着ている人を見かけたときに、仲間の意識で「今からボランティアですか」とか、こちらから声をかけたりもしましたね。

国籍、年齢、経験… 多彩なボランティアがチームで楽しむ

澁谷
その他に、こんな部分がボランティアに必要だと思うところはありますか。

園部
海外から障がいのある方が多く訪れていたのが印象的でした。私は1試合につき最低1人は海外から来られた視覚障害の方を案内しました。

渡部
多かったですね。

園部
普段の生活でもそうした皆さんに接する機会は少なくて、日本が変わるきっかけになるのでは。いろんな人が見に来るのが当たり前になればいいなと思いました。

渡部
もっといろんな立場の人がつながればと。同じ世代や立場で固まらずに、観客の方、ボランティア、障害のある方々、いろんな人々とつながるようになればと思いましたし、自分がそうしたつなぎ役になることも大事だなと思いました。

澁谷
一つのボランティアグループに、国籍や、年齢や、障害の有無や、いろんな特性の人が空間を作ってほしいなと思いますね。D&I(ダイバーーシティ&インクルージョン)の研修で障害当事者とともに障害を学ぶ機会があっても、実際の活動の場面に障害者がいないと、なかなか体感できないので。

それに、ボランティア経験が多様な人が集まるグループがいいですね。ベテランのボランティアが初心者に自分の経験を自慢したりせず、皆がフラットな関係になってやりがいを共有できる場がつくられるのが理想です。

渡部
それは感じますね。時には経験にものをいわすことも目にしますが、経験してないからこそ気づくこともあるので、多様な視点を受け入れられるグループがいいですね。

多胡
ボランティア経験に関係なく、みんなで一つのチームとして活動できるような雰囲気のチームでした。みんなで大会を成功させようというところを共有して、性別や年齢などに関係なく、すべての人が楽しめるチームがいいなと思いますね。