Column

「#2年後の夏―2020年東京大会を動かすボランティア」
企業がスポーツボランティア活動に取り組む理由と現状

6月12日に開催したシンポジウム、「#2年後の夏―2020年東京大会を動かすボランティア」の第1部では、社を挙げてボランティア活動に積極的に取り組む3つの企業によるパネルディスカッションが行われました。
企業はなぜ、ボランティア活動に取り組むのか。どんな期待があり、何が課題なのか。そして、東京2020大会が果たす役割とは?  各社のプレゼンテーションからディスカッションへと話題が広まり、深まるなか、今後の活動へのヒントなども見えてきました。

1. プレゼンテーション

〈凸版印刷株式会社 スポーツ事業開発室 業務推進部 大川誠課長〉

経緯

第一歩は東日本大震災復興支援活動で、被災者の気分転換に役立てばと、仙台市内の仮設住宅(14カ所)を巡回する移動図書館「ブックワゴン」を運行。社員123名が参加。
2016年以降、東京2020大会のオフィシャルパートナー契約の締結を機に、スポーツボランティアにも活動を広げている。

目的

社員がボランティア活動によってさまざまな経験をし、例えば、自主性や公共性、プライベートの充実やコミュニケーション力、ソーシャルビジネスの視点などを育くむことで、人間としての成長が期待できる。社員の成長は企業としての成長にもつながり、ひいては「社会的価値創造企業へ」という社の目標達成にもつながる。

内容

スポーツボランティア研修会への参加、大会観戦の促進。さらに、2019年ラグビー・ワールドカップや東京2020大会のボランティア参加の呼びかけなど。

実績

参加者から、「新たな出会いがあった」「他者から感謝される喜びを感じた」「スポーツ観戦の楽しさを知った」「ボランティアの楽しさを知り、個人でも参加するようになった」など、ポジティブな感想あり。

課題

「会社の成長への貢献度など効果の明確化」と「2020年以降の担い手の育成」。

〈日本生命保険相互会社 オリンピック・パラリンピック推進部
東京2020推進担当 松崎勝彦課長〉

経緯

2008年から2014年までは地域社会への貢献活動として、海岸の清掃や森林の植樹などのボランティア活動に取り組む。
2015年以降、東京2020大会への協賛決定を機に、中期経営計画に「人の価値を高めること」を盛り込み、具体的な活動として人財価値向上プロジェクト「Action-CSR-V」をスタート。約7万人という全社員が毎年、何らかのボランティアに関わることが目標。

目的

ボランティア活動を、「人としての価値を高める一つのパーツ」ととらえ、社員に推奨。活動の軸は、1)企業の生産性に資するため、基本業務のパフォーマンスを高めること、2)社員それぞれが社会人としてのベースを培うこととそうしたマインドの醸成の2つ。

内容

2020年を見据え、保険会社として、「人の人生を支える」というところから、2020年に向けた企業スローガンとして、「支えることをはじめよう」=「Play、Support」を掲げ、アスリート支援活動を展開中。
3ステップで展開。1)社内イントラネットを活用した情報提供: 全国100支社と1,000カ所の拠点があり、各支社のボランティアリーダーを中心に情報拡散に貢献。2)参加インセンティブとしてTシャツを配布: 揃いの赤いTシャツで、一体感も醸成。3)アンケート調査による参加後の振り返り: イントラネットを通じ、アンケートを集め、フィードバックを配信。

実績

すでに、パラスポーツ観戦に1万人、スポーツボランティア活動に4,000人、ボランティア研修会には1,000人が参加。約6割以上から、「また、参加したい」、約3割以上が「機会があれば、検討する」の声も。

課題

いかに定着させ、より多くの人に参加してもらうか。

〈日本電気株式会社 東京オリンピック・パラリンピック推進本部東京2020推進室
「集まろうぜ。グループ」青木一史マネージャー〉

経緯

ボランティア文化は以前からあったが、参加が特定の社員限定という課題があった。東京2020大会のスポンサーとなったことを機に、より多くの社員に活動を広げ、NECの未来を創る活動につなげようという考えが強まる。そこで、「従業員一人ひとりができることから始めよう」をスローガンに、社会貢献事業「NEC Make a Difference Drive(NMDD)」活動をスタート。

目的

本業だけでは視野が狭まり、企業として尻すぼみになる。企業テーマとして、「社会価値創造」を掲げ、社員それぞれがこのテーマのもとに活動。

内容

3つの方針で推進。1)ボランティアについて、「知る・学ぶ」、2)「行動する」、3)2020年以降も「レガシーとして残す」。
日本財団パラリンピックサポートセンター主催の「あすチャレAcademy」(障がい当事者が講師となり、サポート方法などを学ぶ)にも協賛。社員がパラスポーツ大会ボランティアに関わるきっかけにも。

効果

年に社員3万人以上が参加。
さらに、活動を通してボランティアを集める側にも多くの課題があると気づき、本業であるICTの仕組みを活用した運営者向けの支援サービス提供もスタートさせている。

課題

2020年以降にも、どう継続させるか。

2. パネルディスカッション

つづいて、大阪経済大学の相原正道教授をファシリテーターに、ディスカッションが行われました。

相原:3社とも、ボランティア活動を経営戦略として位置づけ、マネージメント能力を駆使して取り組んでいることが分かりました。

ニッセイ:「売る物」がない保険業にとって重要なのは、「無形の価値」を販売する人材です。以前から大きな課題だった社員の育成を、2015年を機に「人材価値向上プロジェクト」として始動させました。自己研鑽のためのアフタースクール受講の推奨やワークライフマネージメント強化を柱に、ボランティア活動もその一環です。

相原:各地で活発に取り組まれている?

ニッセイ:全国の支社で取り組んでいますが、7万人の職員のうち、中心層は内勤の2万人です。営業職員5万人を今後、どう取り込むかが課題です。

相原:ニッセイさんといえば、先日、大阪地区で行われたテニス大会で、大勢の社員さんがボランティアとして活躍する姿が印象的でした。
ところで、NECさんの人材育成ついて、もう少し詳しく教えていただけますか?

NEC:学んだことを行動に動かすには座学だけでなく、参加型のセミナーが大切だと思い、実践しています。

相原:NECさんのグループ名、「集まろうぜ。グループ」は特徴的ですね?

NEC:人材育成のメッセージを込めたネーミングです。人が集まると感動も生まれるけれど、リスクも生まれる。だからこそ、頑張ろうという思いが含まれています。現在、10名で活動しています。

相原:NECさんは本業の得意部分であるICTも生かして取り組まれています。

NEC:社員のボランティア活動だけでなく、本業での貢献も大きな意味での社会貢献になると考えています。

相原:よく言われる、オリンピック後の「レガシー」についてはいかがでしょう?

NEC:レガシーの観点は重要だと思っています。前回1964年大会で、NECはパラボナアンテナを導入し、通信衛星による日米間の海外テレビ中継を初めて成功させました。そういう「ハード面でのレガシー」につづいて、2020年では「ソフト面でのレガシー」を作れたらと考えています。「ボランティア文化」などもその一つかと思います。

ニッセイ:重要なテーマですが、達成への難しさも感じています。例えば、オリパラ推進室などは2020年後にはなくなる可能性が高い。そういう見通しの中、現在の活動をどの部署に引き継いでもらうのかも今から考えねばなりません。
人材価値向上プロジェクトを進める上で、「育ボス」という役職を設けています。所属長が任命されるのですが、さまざまなことを自ら率先し、示していく。そうした中で、社会貢献の必要性も受け継げるのではと期待しています。

凸版:私個人の感想ですが、ボランティア活動に関わる人は大部分が人生の先輩たちや女性など年齢や性別に偏りがあるように思います。私のような(30~50代の)男性は少ないので、企業がボランティア活動を進めるのは意味があると思います。ですから、ボランティア活動は何らかの形で残したいですね。ただ、現在の部署で引き継ぐのか、新たな部署をつくるのかは今後の課題です。

相原:皆さんの取り組みをお聞きして、「日本としてのチーム感」を覚えました。東京2020大会をきっかけに、日本ならではの「新しいボランティアの形」がふくらんでいるような、大きな可能性を感じます。
一方で、せっかく始めた取り組みをどう残すのか、「共通の課題」も見えてきました。これからも、皆で考えていきたいと思います。どうもありがとうございました。

(*敬称略)(構成:星野恭子)