Column

「#2年後の夏-2020年東京大会を動かすボランティア」をテーマに、
ボランティア・シンポジウムを開催

日本財団ボランティアサポートセンター(ボラサポ)は、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会を支えるボランティアへの応募気運の醸成事業の一環として、ボランティア・シンポジウム「2020年東京大会を動かすボランティア」を6月12日、笹川平和財団ビル(東京都港区)で開催しました。
大会ボランティアの募集開始(9月中旬予定)までおよそ3カ月というタイミングでの開催に、会場には約250人の参加者が集まり、関心の高まりがうかがえる熱気に包まれていました。
開会にあたり、日本財団の笹川陽平会長が挨拶に立ち、「ボランティアの活動は大会成功のカギを握ると言っても過言ではない。世界中から多くの人が集まる中、大会を盛り上げ、日本文化を伝えるボランティアの役割はとても重要」と、ボランティアに寄せる期待の大きさを示しました。
同時に、「やりがいの搾取」「ブラック」など、昨今のボランティアに関するネガティブな報道については、「残念」と話し、「多くの人にボランティアに参加いただき、明るい思い出を作ってほしいし、その結果として大会が成功する。そういう参加しやすい環境をつくっていきたい」と、日本財団としてのサポート姿勢についても話しました。

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企業における、ボランティア活動推進の事例

ピョンチャンから学ぶ 大会ボランティアによるクロストーク

ボラサポの活動と提言

企業における、ボランティア活動推進の事例

シンポジウムは2部構成で行われ、第1部は、「企業の取り組み紹介―パネルディスカッション」として、社内的にボランティア活動を推進する3社が各々の取り組みの実績を紹介するとともに、課題などについても意見交換しました。(*各企業の取り組みの詳細は後日、別コラムにてリポート予定です)
まず、凸版印刷・業務推進部の大川誠課長が登壇。同社のボランティア活動は東日本大震災復興支援としての活動が大きな一歩であったこと。そして、2016年の2020年大会オフィシャルパートナーの契約締結を機に、スポーツボランティアにも取り組むようになったこと。今では、スポーツボランティア研修会の開催やさまざまな大会に社員の派遣などを行っています。さらに、2019年ラグビー・ワールドカップ、2020年大会のボランティア参加も呼び掛けています。
推進する背景には、社員がさまざまな経験をすることで、同社が掲げる、「社会的価値創造企業へ」という目標に近づけるという考えがあると言います。実際、参加者からは、「新たな出会い」や「他者から感謝される喜び」などポジティブな声が届いていると言います。一方で、「会社の成長への貢献など、効果を明確にしにくい」「2020年以降の担い手の育成」などを課題に挙げていました。

つづいて登壇したのは、日本生命の松崎勝彦東京2020推進担当課長で、やはり2015年に2020大会への協賛決定を機に中期経営計画の中に「人の価値を高めること」が盛り込まれました。そして、「約7万人の全役職員が毎年何かしらのボランティアに関わろう」という具体的な目標が掲げられ、とくに、「支え合い」=「Play Support」=「支えることをはじめよう」を2020年に向けたスローガンとして、主にアスリート支援活動を展開しています。すでに、パラスポーツ観戦をはじめ、スポーツボランティア活動に4000人、研修に1000人が参加するなど実績を挙げています。
活動の推進には社内イントラネットの活用や、揃いのTシャツ配布による一体感の創出、さらには参加後のアンケート調査による振り返りも推奨。定着に務めています。継続策としては、研修の継続開催や、アスリートとの交流などスポーツを知り、好きになり、ボランティア活動につなげる取り組みも行っています。「人としての価値を高める一つのパーツとしてのボランティア活動を多くの人に体験してほしいので、もっと広めていきたい」と話していました。

最後は、日本電気の「集まろうぜ。グループ」から、青木一史マネージャーが登壇し、同社の社会貢献事業「NEC Make a Diffence Drive(NMDD)」を紹介。「従業員一人ひとりができることから始めよう」という活動で、すでに年間3万人以上が参加しています。同社はこうした活動を通して、ボランティアについて、「知る・学ぶ」、そして、「行動する」、さらに、2020年以降も「レガシーとして残す」ことを目標としています。
また、活動を通して、ボランティアを集める側にも多くの課題があると気づいたことから、同社が得意とするICTの仕組みを活用した管理、運営の支援サービスへと発展しているそうです。ボランティア活動を通して社員の参加だけでなく、本業としての貢献も、大会の成功やその先の社会をつくる一助になると信じ、活動を推進しています。
第1部のファシリテータを務めた大阪経済大の相原正道教授は各社の発表、意見交換を踏まえ、「どの社もボランティア活動を経営戦略として位置付け、マネージメント能力を駆使して取り組んでいる。2020年を見据え、新しいボランティアの形がふくらんでいるようだ」と感想を述べました。

ピョンチャンから学ぶ~大会ボランティアによるクロストーク

つづく第2部では、ピョンチャンオリンピック・パラリンピックのボランティア経験者によるクロストークが行われました。ファシリテータを担ったのはボラサポの参与で、文教大学准教授でもある、二宮雅也氏。そして、登壇したのは今年初旬、ボラサポがピョンチャン大会期間中に実施した4回の視察調査中に二宮参与が出会った3名のボランティアでした。参加の動機と収穫などについて、三人三様の言葉で語りました。
キム・ドンウさんは韓国出身で、今は日本で学ぶ医学生で、以前、国際スポーツ大会で通訳を務めた先輩に憧れて大会ボランティアに応募。パラリンピック大会で、国際パラリンピック委員会の役員のアシスタント(PFA)を担当し、「世界中のさまざまなバックグランドの人たちと交流ができたり、医学を志す者として視野が広がった」と言います。
玉置志帆さんは、日本のスポーツメーカーに勤務。韓国赴任経験もあり、日英韓の通訳として採用されたものの、最終的にはオリンピックのフィギュアスケート会場で、来場者のチケット確認や座席案内、トラブル対応などを行うEV(イベントサービス)に配属されました。
職業がら、「スポーツの最高峰の舞台裏を見たい」、「大学時代にスキー部のマネージャーで、後輩たちのオリンピックでの勇姿を間近で応援したい」というか思いがボランティア応募の動機でしたが、「ボランティアは与えるものだと思っていたが、得られるものがかなり多かった」と充実の表情で振り返りました。
クオン・ヒョヌさんは韓国で社会福祉学を学ぶ大学生。先天性の障がいのため、車いす生活を送るなか、「ずっと助けてもらう側だったので、恩返ししたい」とボランティアに挑戦。オリンピックとパラリンピック2大会を通して、「大会広報館」で展示説明や案内係を担当しました。「来場者に喜ばれ、役に立てていると感じて嬉しかった」と笑顔で語りました。

それぞれ活動中の苦労談には2020年大会への重要な示唆がありました。キムさんはPFAという仕事がら、事前研修にはなかった対応を求められることも多く、「PFAのコールセンターを頼りにした」そうです。また、玉木さんは日本人観客の多い会場で負担が集中。「少なくともマネージャーなどには英会話力が必要」と強調しました。
クオンさんは通勤用に車いすでも乗れるバスが配車されたものの、休日は使えず、「試合観戦に出かけたくても難かしく、残念だった」そうです。要望はしたものの、改善されることなく大会は終了。「宿舎もバリアフリーな環境を提供されたし、担当会場でも障がいがハンデになることはなかった」とクオンさんが話していただけに、あと一歩の配慮がなかったのは残念でした。
ボランティア経験は登壇者の未来にも影響を及ぼしたようです。キムさんはパラリンピックのイメージが、「感動するもの」から、「スポーツとして見応えのある大会」へと変化したことを挙げ、将来の選択肢として、「スポーツ医学にも興味を感じるようになり、パラアスリートの医学的支援も視野に入ってきた」といいます。
玉木さんは、勤務する会社には2週間のボランティア休暇制度(2週間)があるものの、取得率はかなり低いと話し、「ピョンチャンでは、日常的には出会えない企業や分野の方とも出会え、視野が広がった。こんな経験をもっと多くの人にしてもらいたい。経験談を広めることも、これからの私に課せられた仕事」と意気込みます。
クオンさんは、「助けられるという受動的な立場から、ボランティアとして自分も能動的に生きられる、という自信がついた。今後は障がい者支援の仕事で頑張りたい」と胸を張ります。
2020年大会でボランティアを志す人へのメッセージとして、キムさんは、「貴重なチャンス。迷ったら、ぜひ応募を」。玉木さんは、ピョンチャンは学生やシニアが多く、30代、40代が少なかったが、「自己判断を求められる場面も多く、社会人経験が役立つ。得るものも多く、人生を変える経験になるかも」とアピール。クオンさんは、「国家的な大イベント。誇りをもって参加して」と、3名とも積極的な応募を呼び掛けていました。
二宮参与は、「ピョンチャンは冬季大会なので、そのままの応用は難しいかもしれないが、必要なサポートなど参考になる点が多かった。また、ボランティアが楽しめるための工夫も必要。今後に生かしたい」と貴重な体験談の共有に感謝していました。

ボラサポの活動と提言

つづいて、二宮参与がシンポジウムを通して、「考えるべき2つの観点があった」と総括しました。一つは、冒頭の笹川会長が指摘したネガティブな解釈も含め、「ボランティアをどうとらえるか」という観点です。「ボランティア・マインドの理解、共有には、教育の果たす役割が不可欠。すでに根づいている欧米と違い、日本では2020年大会前に取り組まねばならない課題として浮き彫りになった」と指摘しました。
もう一つは「ボランティアレガシーをどう残すか」という観点。現在、バラバラに行われている印象があるボランティアベースの活動を、「もっと総合的にとらえ、点から面の活動にするためのプラットフォーム作り」といった2020年以降も見据えた活動の重要性も示しました。
二宮参与は、「まずは2020年大会を成功に導くボランティアへの応募機運を高めることがボラサポの役割」と強調し、その一歩として、ボラサポが作成したコンセプトムービー「#2年後の夏」がこの日、この会場で初公開されました。
さらに、ボラサポが2020年大会成功のために作成した提言書も読み上げられました。提言書には、1.東京大会を楽しむ、2.出会いを楽しむ、3.可能性を感じる、4.ボランティアレガシーの構築の4項目が盛り込まれています。
最後に二宮参与が、「ボランティアが楽しく、気持ちよく活動できる素地をつくるために、この提言に基づいたさまざまなサポートを行っていきたい」とボラサポの使命と覚悟を述べ、シンポジウムは盛況のうちに閉会となりました。