Column

「#2年後の夏―2020年東京大会を動かすボランティア」
日本財団ボランティアサポートセンターからの提言

6月12日に開催したシンポジウム、「#2年後の夏―2020年東京大会を動かすボランティア」では、会の最後に、日本財団ボランティアサポートセンター(ボラサポ)参与で、文教大学准教授の二宮雅也氏がシンポジウムの総括と「東京2020ボランティアへの提言」を発表しました。

〈二宮雅也 氏〉

東京2020大会の開幕まであと2年。8万人の大会ボランティアと3万人の都市ボランティア、合計11万人のボランティアとともに、2020大会を成功させるには何が必要なのでしょうか。

今日のシンポジウムでは企業の取り組みや大会ボランティア経験者から貴重なお話をお聞きし、ボランティアについて新鮮な発見と学びがたくさんありました。特に2つの観点で深く考えさせられました。

一つは、「ボランティア教育」です。シンポジウム冒頭で笹川会長も話されましたが、ボランティアについては多様な解釈があり、ネガティブな見方もあります。とはいえ、今日の会場においでの皆さんには腑に落ちないという方も多いかもしれません。

ボランティア経験者には共感いただけるかと思いますが、私もスポーツだけでなく、さまざまな分野のボランティア活動を通し、人との出会いや感動など多くの貴重な経験をしてきました。ボランティアの価値とは、それら一つひとつの積み重ねだと思っています。

こうしたボランティアの意義を伝え、理解を深めるために欠かせないのが、「教育」です。欧米では歴史的にボランティアが文化として根付いている地域も多いですが、日本ではまだ、いわゆる「ボランティア教育」が必要だと思います。どういう教育方法なら、ボランティアマインドを自然に理解でき、共有できるのか。2020年大会を前に真剣に取り組まねばならない明確な課題が浮き彫りになったと感じています。

もう一つは「ボランティアレガシー」です。2020年大会以降に、どんなボランティア社会を残せるのか。もちろん、現在もボランティアベースで行われている活動はさまざま、活発に行われています。でも、それぞれがバラバラに進んでいる印象もあります。

この先、2019年ラグビーワールドカップ、東京2020年大会、そして2021年マスターズ大会など大きなスポーツイベントが続きます。そんな今だからこそ、スポーツボランティアをレガシーとして残すために、活動をもっと総合的にとらえ、点の活動から面の活動にすることが大切ではないか。そのためには、プラットフォーム作りや体制作りも大きな課題だと強く感じています。

こうした課題も踏まえ、私たち「ボラサポ」の使命はまず、東京2020大会の成功を担うボランティアへの応募機運を高めることです。そこで、ボラサポではさまざまな方と連携し、ボランティア応援促進ムービー「#2年後の夏」を作成しました。

東京大会のビジョンは3つの基本コンセプトからなり、その一つに「多様性と調和」という重要なキーワードがあります。「一人ひとりが互いを認め合う」という意味があり、「ダイバーシティとインクルージョン」とも言い換えられます。

ムービーでは、多様な人たちが「インクルーシブな社会とは何か」というメッセージを力強く発信し、新しい「調和」の形を見せてくれているように思います。

東京2020大会では、ボランティアとして多様な方たちに活躍していただきたいと考えています。さまざまな価値観や能力を持った人たちが協力してこそ、「チーム」としてより大きな力が発揮されるはずです。それはまた、新たな出会いの場となり、ボランティアの皆さんにとっても楽しく有意義で、「やってよかった」という活動になると信じています。

そうした期待も込めて、「ボラサポ」では、2020年以降のボランティアレガシーの構築も見据え、ボランティア活動の魅力を最大限に伝えるとともに、東京2020大会を成功に導くボランティアをしっかりサポートするという観点から、「2020年東京大会ボランティアに関する提言書」を作成しました。

提言書

  • 東京大会を楽しむ

    何かを「支える」活動には、その苦労とともにそこでしか味わうことのできない満足感や達成感、そして感動があります。大会・都市ボランティアの立場から、オリンピック・パラリンピックそのものを全力で楽しみ、大会との一体感を味わい、ボランティアとしての経験が「誇り」となるよう活動をサポートします。

  • 出会いを楽しむ

    何世界中から集結するボランティアとの出会い、一緒に仲間と活動する中で形成される「絆」はかけがえのないものです。また、世界中から来日する観客や選手とのコミュニケーションは、出会いの素晴らしさを体感させてくれることでしょう。ボランティアが大会を通じ、さまざまな「出会い」を楽しめるようコミュニケーションの場の構築を図ります。

  • 可能性を感じる

    大会を支えるボランティアは、性別や年齢、国籍や障がいの有無に関わらず、多様な人々によって構成されます。それぞれの強みを活かした活動は、現場で経験するさまざまな困難を乗り越えることへと繋がります。ボランティアが「多様な一人一人が輝く姿を知る」ことを通じて未来を想像(創造)できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンを推進します。

  • ボランティアレガシーの構築

    日本社会では今日も様々な領域で多くのボランティアが活躍しています。しかし、その認識は必ずしも十分とは言えません。11万人以上が活躍する2020年東京大会のボランティアを通じてボランティア理解が進むとともに、ボランティア文化が醸成されるようボランティアサポートに取り組みます。

ボラサポでは今、具体的なサポートとして、大会ボランティアに採用された方を対象にした研修用教材を作成中です。教材といっても、ルールや規則など「やらなければならないこと」ではなく、ボランティアが「活動を楽しむために」知っておいてほしいことや身につけておくとよいスキルなどをまとめています。

最近、日本のスポーツ界では残念なニュースが続いており、スポーツの高潔性(インテグリティ)が問われています。ボランティアはスポーツの活動を支えるわけですから、「支えたい」と自発的に感じさせるような存在でなければなりません。

ボランティア活動へのモチベーション形成という意味でも、2020年大会を通じてスポーツの高潔性を訴えていくことはとても重要だと感じています。簡単ではありませんが、少しでも解決に導けるよう、関係者と情報を共有し、努力します。それは、ボランティアの皆さんが楽しく、気持ちよく活動できる素地を作ることにもつながると思うからです。

いよいよ9月中旬から、東京2020オリンピック・パラリンピックの大会ボランティアの募集が開始されます。ボラサポとしても、この「提言書」に基づき、さまざまなサポートを行っていきたいと思います。より多くの皆さんに応募していただきたいです。皆で素晴らしい大会を作り上げましょう。

(構成:星野恭子)