平昌2018冬季パラリンピックにおけるボランティア現地リポート vol.2|ボラサポ
Column

平昌冬季パラリンピック大会における
ボランティア現地視察リポート(全3回)

2018年3月9日~18日まで韓国で開催された、第12回冬季パラリンピック平昌大会。49の国や地域などから約570選手が参加し、冬季大会としては史上最大規模となった大会を支えたのは20カ国を超える各地から選ばれた約5,800人のボランティアたちだ。いったいどんなきっかけで参加し、実際にどんな経験や感想をもったのだろうか。彼らの声は、2020年東京大会を控えた私たちに貴重な気づきを与えてくれた。全3回のシリーズでお届けする。

vol.2

オリンピックとパラリンピック、両大会を経験して
ウォーレン・エリックソン(Warren Erickson)さん/69歳/無職(引退)

「オリンピックのボランティアは、国籍も世代もさまざまな『仲間たち』と交流し、協力し合うところ。チャンスがある限り、チャレンジしたいですね」
そう言って目を細めたのは、アメリカ人のウォーレン・エリックソンさん(69)。オリンピックのボランティアは平昌大会で5回目になる。若い頃からさまざまなボランティア活動に携わってきて、今でも地域で活動するボランティア団体のメンバーとして精力的に活動中だ。
幼い頃から趣味はスキーで、アルペンスキークラブのコーチや会長を務めたこともある腕前だ。オリンピックがボランティアで運営されていることを知ったのは2002年。スキー仲間の一人がソルトレークシティ大会のボランティアを務めたと聞き、「スキーとボランティア。僕にもきっと素晴らしい体験ができるはずだ」と興味を持った。
思いがかなったのは2010年バンクーバー冬季大会で、スキージャンプ会場で映像メディアのサポートを担当した。放送ケーブルの設営など、屋外でのきつい作業も多かったが、「充実の毎日だった」と振り返る。以来、12年ロンドン、14年ソチ冬季、16年リオとオリンピックの大会ボランティアを楽しんだ。
「いろいろな国に行き、スポーツ好きのユニークな人たちと工夫しながら働ける幸せ。外国の友人をつくるのもやりがいの一つ」と笑う。

米国から参加したウォーレン・エリックソンさん。
米国から参加したウォーレン・エリックソンさん。韓国は初訪問。オリンピックとパラリンピックで滞在は1カ月を超えた (提供:ウォーレン・エリックソンさん)

18年平昌ではオリンピックに加え、パラリンピックでも活動した。パラリンピックへの興味というよりは、以前からできれば長期間活動したいと思っていたそうで、今回は仕事を引退して時間ができたこと。そして、平昌ではボランティアにも宿泊所が提供されたので長期滞在しやすかったことが決め手だった。
宿泊所は担当したスキー会場から専用バスで1時間ほどの高校の寮だった。“同居人”は約30人。20代から60代までの老若男女のなか、韓国人でないのは自分一人。英語を話せない人も多かったが、過去の経験もあり、それほど不便は感じなかった。むしろ、「宿泊所は他のボランティアと交流しやすく、絆も深まる。それに費用負担がないのは大きい。せめてパラリンピックだけでも提供されれば、ボランティア応募者も増えると思う」と、宿泊所のメリットを話してくれた。
担当部署はオリンピック、パラリンピックともにスキー会場のメディアルームだったが、初めてのパラリンピックには新発見がいろいろあって、「ボランティアとして視野が広がった」。
オリンピックに比べ、参加選手が約5分の1という大会規模の違いに加え、エリックソンさんのように、オリンピックからつづけて活動し慣れたボランティアも多く、意思疎通や問題解決などもしやすかったことから、「パラリンピックでは、少しリラックスして活動できた」という。

ボランティア仲間たちと。後列赤い帽子がエリックソンさん。
ボランティア仲間たちと。後列赤い帽子がエリックソンさん。 (提供:ウォーレン・エリックソンさん)

また、パラリンピックはメディアの数がかなり少なかった一方で、視察団の数には驚かされた。連日、日本や中国など次の開催地からバリアフリー対策などの調査団が大挙して訪れ、その対応のほうで忙しかった。「メデイアの注目は低いのに、数多くの視察団。『パラリンピックの普及は、まだこれから』というのがよく分かった」と振り返る。
もう一つ、車いす用スロープなどはパラリンピック開幕直前に慌てたように設置される様子を目の当たりにして、「これまで気にしたことがなかったが、スロープなどは誰にとっても便利なのもの。パラリンピックだけでなく、オリンピックの時から設置しておけばいいのでは……」。両大会を連続して経験したからこそ、気づけたことだ。
「2020東京大会にも参加して、日本の友人もつくりたい。そして、選手に喜ばれるいい活動ができたら」と目を輝かせるエリックソンさん。
こうしたベテランボランティアの多彩な経験や幅広い視野を上手に引き継いでいくことも、オリンピック・パラリンピックのボランティア運営にとって、大切な視点ではないだろうか。

(文・写真:星野恭子)

メインプレスセンター(MPC)入り口のセキュリティ担当のボランティアたち
メインプレスセンター(MPC)入り口のセキュリティ担当のボランティアたち