平昌2018冬季パラリンピックにおけるボランティア現地リポート vol.1|ボラサポ
Column

平昌冬季パラリンピック大会における
ボランティア現地視察リポート(全3回)

2018年3月9日~18日まで韓国で開催された、第12回冬季パラリンピック平昌大会。49の国や地域などから約570選手が参加し、冬季大会としては史上最大規模となった大会を支えたのは20カ国を超える各地から選ばれた約5,800人のボランティアたちだ。いったいどんなきっかけで参加し、実際にどんな経験や感想をもったのだろうか。彼らの声は、2020年東京大会を控えた私たちに貴重な気づきを与えてくれた。全3回のシリーズでお届けする。

vol.1

初めてのボランティア、初めてのパラリンピックで広がった可能性
キム・ドンウ(Kim Dongwoo)さん/22歳/学生

ボランティア体験が視野を広げ、将来の選択肢を広げることもある。
そんな体験をした一人が韓国ソウル出身で、現在は日本に留学中の医学生、キム・ドンウさんだ。平昌冬季パラリンピック大会で、初めてスポーツボランティアに挑戦した。
きっかけは2014年。韓国・仁川で開催されたアジア選手権で通訳ボランティアとして参加した先輩を「かっこいい」と思ったことだった。「いつか自分も」と思っていたところ、最初のチャンスが平昌大会だったというわけだ。
当初はオリンピックを希望していたが、大学の授業の関係で参加できるのはパラリンピック期間だけ。障がいのあるアスリートの大会であること以外、パラリンピックについての深い知識も観戦経験もなかったが、母国で開催される最高峰の祭典だ。「とにかく、関わりたい」という思いで応募した。
応募時の第一希望は通訳業務だった。父の仕事の関係で暮らした小学生時代も含めた約8年の日本在住歴で培った日本語力を活かせると思ったからだ。だが、配属されたのはパラリンピック・ファミリー・アシスタント(PFA)という耳慣れなれないものだった。

韓国ソウル出身のキム・ドンウさん。平昌パラリンピックでボランティアを初体験
韓国ソウル出身のキム・ドンウさん。平昌パラリンピックでボランティアを初体験

PFAとは国際パラリンピック委員会や各国のパラリンピック委員会の役員らを補佐する役割で、会議や観戦といった予定が円滑に進むよう手配したり、運転手への指示や資料の翻訳など、さまざまな業務が含まれる。
キムさんは日本人の役員を担当することになった。「社会人経験のない自分に、海外の偉い方のお世話なんて務まるかな?」と不安もあった。また、事前研修は受けたが、実際の現場では臨機応変の対応も求められ、自主的に勉強が必要なこともあったという。
だが、めったにできない貴重な体験だからこそ、何もかもが新鮮で学ぶことばかり。「楽しく有意義な時間でした。挑戦してよかった。感謝の思いしかありません」と振り返る。
何より大きな収穫は、「パラリンピックを見る目が変わったこと」だという。大会前は、「障がいのある選手の頑張る姿は感動的だろう」という期待はあったが、特に関心が強かったわけではなかった。

開会式直前のオリンピックパークで、観客をサポートするボランティアたち
開会式直前のオリンピックパークで、観客をサポートするボランティアたち

だが、期間中、パラアイスホッケーなどの観戦機会があり、目の当たりにしたパラアスリートの姿に、「感動どころじゃない。障がいなど感じさせないレベルの高さ。エリート選手による真剣勝負はスポーツとして迫力があって面白く、これからも積極的に観戦したいと思った」という。
さらに、パラリンピックを経験したことで、医学部3年生のキムさんは進路の選択肢として、「スポーツ医学や障がい者関連分野にも興味を覚えた」という。パラアスリートを医療専門家としてサポートする分野にも視野が広がったのだ。
「オリンピックでも通訳でもなかったが、初めてのボランティアにはとても満足。できれば2020年東京大会でも挑戦したいし、友人たちにも勧めたい」とキムさんは目を輝かす。「やってみたい」の気持ちで一歩を踏み出し、前向きに取り組んだことで、新たな扉が開けたのだ。

(文・写真:星野恭子)

クロスカントリースキー会場で、選手に声援を送るボランティアたち
クロスカントリースキー会場で、選手に声援を送るボランティアたち