JOURNALジャーナル

東京2020大会へ前を向く「洗車ボランティア」
企業人の有志が大会専用車両をクリーンアップ

2020

2021.08.30

パラリンピックも開幕しましたが、大会で活動するフィールドキャスト(大会ボランティア)、シティキャスト(都市ボランティア)を支えようと集まった企業人ボランティアに対し、間近に迫った大会の熱気を肌で感じてもらおうと、6月22日、25日、29日の日程で、大会関係者の輸送に使用される専用車両を洗車するボランティア活動が行われました(東京商工会議所と東京都の連携事業「プラス・ワン運動」の一環で開催)。

当日は、開催へ前向きな期待を寄せる多くの有志たちが参加。また、洗車活動とあわせて、大会開催中の交通対策に関するレクチャーも実施され、TDM(交通需要マネジメント)についての理解も深めました。ここでは、その様子をレポートしていきます。

 

車両基地「築地輸送デポ」に集合した企業人ボランティア

今回の主役である企業人ボランティアは、東京商工会議所とオリンピック・パラリンピック等経済界協議会に加盟する社員を中心に募られました。

これまでも大会開催に向けて、大会期間中の交通混雑の緩和をお願いする呼びかけ、​ボランティアとしての心構えやバリアフリーを学ぶ共通研修などを実施してきました。

会場となった「築地輸送デポ」は、選手や大会関係者を運ぶバスや乗用車(フリート)を収容、管理する車両基地です。築地市場の跡地を活用した、約15ヘクタールの広大なスペースにバスの給油所や洗車場などが整備され、大会期間中には1,700台以上の大会専用車両が運行される予定となっています。

大会専用の乗用車には、国際オリンピック委員会(IOC)のトップスポンサーであるトヨタ自動車株式会社からリース提供された、「MIRAI」「プリウス」「ヴォクシー」「ノア」などの人気車種が活用されます。特に環境にやさしい水素を動力源とした「MIRAI」には、輸送を担うボランティアの方たちからも「運転してみたい!」と注目が集まっているといいます。

各車両には大会専用のカーナビが搭載され、安全と効率を考慮して選定された最善の輸送ルートが表示されます。大会ボランティアが受け取るスマートフォンの専用アプリとも連動しており、大会関係者をスムーズにピックアップできる仕組みが構築されています。

また、車両に貼られた二次元バーコードをスマートフォンの専用アプリで読み込むことで、ドアの開錠・施錠やエンジンのON/OFFを操作できるのも大会専用車両ならではの特徴。キーを必要としないので、多数のドライバーが利用する車両では大変便利なシステムです。また、スマートフォンには乗車時の点検項目も表示され、車両の安全確認も行えます。

 

大会車両の洗車はもちろん、TDMの講義や基地内の視察まで!
充実した体験を生んだ大会貢献活動

洗車活動は、築地輸送デポ内の立体駐車場1階にある洗車スペースで実施されました。企業人ボランティアの方たちが事前に用意されていた防水ウエアやグローブ、長靴を身につけると、準備は完了です。担当者から洗車の手順ややり方に関する説明を受けた後、41組でチームを作り、作業に取り掛かりました。

まずは高圧洗浄機を使って、車全体の汚れを落としました。小さな砂やほこりといった汚れを洗い流さずに、そのままブラシやスポンジなどで擦ってしまうと、車のボディに細かい傷がつく原因になってしまうからです。水流をボディに垂直に当てるようにしながら、上から下の順番で洗うのがポイントとのことでした。

続いて、洗車専用の柔らかいスポンジやブラシを使って、ボディやバンパー、ホイールやタイヤに付着した汚れを落とします。大会期間中に大会関係者が乗る大事な車両とあって、皆さん、その表情は真剣です。

そして、最後にもう一度、高圧洗浄機を使って車全体をしっかりとすすぎ、専用のクロスで水滴を拭き上げたら、洗車は完了です。1時間ほどの活動時間の間に、1組あたり約4台の洗車を完遂してくれました。きれいになった車両を見た企業人ボランティアの皆さんは、とても満足そうな表情を浮かべていました。

洗車活動が終わった後には、東京都オリンピック・パラリンピック準備局大会施設部から、大会輸送に関するレクチャーが行われました。

TDMとは「Transportation Demand Management(交通需要マネジメント)」の頭文字を取ったもので、自動車の効率的利用や公共交通への利用転換などによって交通需要を調整する取り組みを指します。東京2020大会ではかつてないほどの来客者が東京を訪れることが予想されたため、東京都オリンピック・パラリンピック準備局では「2020TDM推進プロジェクト」を立ち上げて、かねてからTDMを活用した事前準備を進めてきました。

冒頭 東京都から、「大会収容人数が減ったことで、TDMは必要ないのではないかという声も上がっていますが、選手や大会関係者が大会専用車両を使って移動することに変わりはありません。道路の交通量もコロナ禍前に戻りつつある今、経済活動や都市活動に影響を与えないようにするためには、延期前と同様に対策を講じる必要があります」と、TDMの重要性についてあらためて説明がありました。

また講義では、大会延期から現在に至るまでの検討状況やコロナ禍で変化した交通状況、大会期間中の交通マネジメントや交通対策など、東京2020大会の輸送活動で必要となる情報が幅広く共有され、企業人ボランティアの方たちにとってもTDMの理解を深められる、とても有意義な内容となりました。

そして、最後は参加者全員で築地輸送デポ内を視察。担当者から実際に使用される専用車両や基地内の設備の説明を聞くことで、皆さん思い思いに大会開催のイメージを膨らませていました。

 

大会開催に向けたポジティブな気持ちが伝わる!
参加した企業人ボランティアや企画者たちの声

2時間の充実した内容となった、築地輸送デポでの大会貢献活動。実際に活動した企業人ボランティアの皆さんは、どんな感想を持ったのでしょうか。参加者の柴田茂明さんと角谷美法さんに話をお聞きしました。

大手電機メーカーでシステムエンジニアとして働く柴田さんは、社内イベントや音楽イベントでのボランティアをはじめ、これまでにも数多くのボランティア活動に従事してきたといいます。そうした中、オリンピック関連のボランティアには今回が初参加とあって、そのスケールの大きさに少し興奮した様子で話してくれました。

「オリンピックに裏方として携わることができる。そんな貴重な機会は、私が生きている間にはもう訪れないはず! 大会貢献と思い出づくりを兼ねて、今回の活動に参加しました。実際に今日の洗車活動に参加して、これだけの数の車両が大会期間中に大会関係者を運ぶことを想像するだけで、胸が高鳴りました。」(柴田茂明さん)

今回が記念すべき初のボランティア参加となった角谷さんは、銀行でAIを開発するデータサイエンティスト。スポーツ観戦が大好きで、ボランティアとしてなら自国開催となる大会に参加できるかもしれないとの想いから、今回の活動に参加したといいます。

「東京2020大会のラッピングが施された車両を洗車したことで、あらためて大会開催の実感を抱くことができました。私個人として大会に貢献できることは、選手や関係者の方たちに歓迎や応援の気持ちを伝えることだと思っています。たとえば、今日の洗車活動のように、その方たちに乗っていただく車をキレイにできれば、それはホスピタリティのひとつとして相手にも伝わるはずです。ボランティアを通して感謝の気持ちを表現し、大会を盛り上げていきたいですね!」(角谷美法さん)

また、今回のボランティア活動の企画者として裏方で支えた、東京商工会議所の佐藤弘太さんは次のような感想を寄せてくれました。

「長引くコロナ禍の影響で企業人ボランティアの活動も延期が続いていましたが、本日このような形で開催でき、多くの皆さんの笑顔を見ることができて非常によかったと思います。東京都や東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会をはじめ、大変な時期でも前を向いて準備を進める方々のご協力がなければ、活動を再開させることはできませんでした。今後も大会開催に向けて、新型コロナウイルスの感染対策をいっそう徹底するとともに、開催都市の一員として東京商工会議所が一貫して取り組んできたTDMを引き続き推進したいと考えています」(佐藤弘太さん)

「本日の活動は、募集をかけるとすぐに定員が埋まってしまうほど、何かの形で大会を支えたい、と思われている多くの方に参加いただくことができました。東京商工会議所の佐藤さんをはじめ、東京都や組織委員会の皆さん、企画いただいた方々には大変感謝しています。世の中は厳しい状況が続いていますが、こうした状況下でも、自分にできることで貢献をしていきたい、とポジティブな気持ちをお持ちの方々がいらっしゃることを心強く感じました。大会本番は間近に迫ってきましたが、こうした方々の前を向く姿勢・思いの輪を、この先にも広げていけるよう、経済界が連携することで何ができるか、すべきかを考え、しっかりと縁の下から支えていきたいと思います」(本間健介さん)

日々地道な努力と創意工夫を重ねる企業人ボランティアだからこそ、こうした状況下であっても大会を支えてくれているんですね。

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