JOURNALジャーナル

増田明美さんトークショーで
東京パラリンピックの楽しみ方や
選手・競技の見どころを紹介

2020

2021.08.25

過去最多のメダルを獲得し、若い世代のアスリートたちの躍動も話題となった東京オリンピック。その興奮冷めやらぬままに、東京パラリンピックが開幕しましたボラサポでは開幕前の8月18日(水)、パラ直前Weeeekとして、「パラリンピック直前トークショー~パラ競技の魅力に迫ろう~」オンラインで開催ました。

ファシリテーターとして、15年に亘りパラリンピックを取材し、関連記事や書籍を多数執筆しているフリーライターの星野恭子さん、ゲストに1984年ロス五輪・マラソン代表で、現在は日本パラ陸上競技連盟会長でもある増田明美さんを迎えて行ました。たくさんのボランティアの方が生視聴した今回、真剣な話題の中にユーモアも交えつつ、パラ競技の魅力を存分に語ってくれました。みなさんも東京パラリンピックが、もうそこまで来ていることを実感したことでしょう。その充実したトークの模様をお届けします。

 

過去最大の選手団で挑む!多様性に溢れたワンチームで目指すのは
「金メダル以上」の結果

【東京パラリンピック開催情報】(8月18日時点)
8月24日(開会式)25日(競技スタート)〜9月5日(閉会式)
22競技、539種目、選手数は4400人が参加予定
参加国、地域は160前後の見込み

星野さん
まず今大会は、16回目の夏のパラリンピック大会なんですが、日本代表選手団は総勢464人、過去最大の選手団です。内訳は選手が255人、競技パートナー23人、コーチ・役員など186人ということで、大選手団でこの大会を戦っていくことになるんですよね!(818日時点)

増田さん
先日行われた結団式でいいなと思ったのが、日本選手団464人全員の名前を読み上げたんです。あれは心が温まりましたね。

星野さん
そうですね。そして今回、選手だけではなく、ボランティアでも障害のある方がたくさん参加してくれているのも東京大会の特徴です。障害のあるなしに関わらず、ワンチームになって活躍することが大切です。みなさんも大選手団の一員として、それぞれに声をかけて協力しあって参加してほしいと思います。

それから改めてパラリンピックを開催する意義というのも、オリンピックとはちょっと異なるものがあるのではないかなと考えています。増田さんはそれについてどうお考えですか?

増田さん
車いす、義足、視覚障害など、様々な障害があり、その中で最高のパフォーマンスを目指していく。多様性の中で全力を尽くす、ということですよね。パラリンピックって、社会を変える力を感じます。ロンドンパラリンピックが終わった後、障害者の雇用が130万人以上増えたそうですし、北京パラリンピック後には万里の長城がバリアフリー化して、エレベーターやロープウェイができました。ソチでもパラリンピック後はロシアの200くらいの都市でバリアフリーマップができたり、パラリンピックというのは社会を変えたりする力があるんじゃないかなと思います。

星野さん
選手のみなさんへインタビューをしていると、自分がやっている競技をPRしたい、という想いと共に、障害者への理解を社会に広めるための、ひとつのきっかけになりたい、という声をよく聞きます。

増田さん
パラ卓球の岩渕幸洋選手が、「金メダル以上の結果を残したい」と言ったことが印象的。オリンピアンは、「金メダル以上」とは言わないですものね。

星野さん
そうですね。パラスポーツの魅力を伝えて、障害者を取り巻く環境をよくしていきたい、という意味で「金メダル以上を目指している」とよく言っていますね。あと選手を見ていると、”できないをできるに変える工夫”、というのもよく感じられます。

増田さん
”できないをできるに変える工夫”の中で、車いすや義足の技術革新がありますけど、パラアスリートのみならず関わる人すべてが、最高の結果を目指して色々な努力をしています。

例えば、マラソンで言ったら、腕に障害のあるT46クラスの永田務選手は金メダルを狙っていますが、実業団の選手が練習パートナーなんですよ。世界ランキング2位の記録をびわ湖毎日マラソンで出したのですが、あのときは実業団の旭化成チームのところへ行って練習をしていたんです。そういった”オリパラ一体”の出来事もよくあります。そういえば視覚障害全盲のクラスで走り幅跳びに出場する高田千明選手のコーラー兼コーチの大森盛一さんも、バルセロナオリンピックに出場したマイルリレーの選手だったんですよ。

星野さん
オリンピック選手だった人がコーチとして参加していることも多いですよね。”オリパラ一体”とよく言われていますが、そういうことが実際に競技の現場で起こっているんです。

 

注目のパラ競技は?
日本代表は世界トップレベルの選手が勢揃い

星野さん
ここからはまず、パラ陸上競技の話を伺いたいのですが、増田さんがぜひ注目してほしい種目はなんですか?

 

新競技『ユニバーサルリレー』が面白い

増田さん
今回の東京大会から新しく加わった種目に、ユニバーサルリレーというものがあります。男女混合の4×100mリレーで、1走が視覚障害、2走が立位の切断及び機能障害、3走が脳性麻痺、4走が車いすの人が走ります。どこに男性、女性を配してもいいので、目まぐるしく展開が変わり、最後までどのチームが勝つか分からないので面白いんです。見ているとみんな違って、みんな素敵なので、多様性の象徴的な種目じゃないかなと思います。

パラリンピックの花形は『陸上競技』!

星野さん
パラ陸上競技は22競技の中で1100人の選手が167種目で競うという、パラリンピックの中でも花形の競技で、多様性が見られます。競技は障害 の程度によってクラス分けされていて、できるだけ公平に競技が行われるように工夫されています。陸上競技を見ていると数字(例:100mT11)が出てくるので、ぜひ注目してみてください。あと増田さんと言えばマラソンですので、そちらも紹介していただけますか?

 

東京パラリンピックの大トリ『マラソン』は金メダル候補!

増田さん
今回の東京大会の陸上競技の大トリをつとめるのがマラソンで、しかも金メダルを獲れそうなんです! それが道下美里選手。彼女はT12(視覚障害)クラスのマラソンの世界記録保持者で、トラックの5000mでも自己ベストをボンボン出しているんです。リオパラリンピックの銀メダルから一段と成長し、すごく期待しています。車いすマラソンも男女のレースが行われますが、鈴木朋樹選手は早くに日本代表内定を取って準備万端。彼のライバルであるダニエル・ロマンチュク選手(アメリカ)、マルセル・フグ選手(スイス)の最後の切れ味がすごいからと、負けないスピードを磨くために100mのトラックレースにもチャレンジしているんですよ。そういった努力が成果として実るのが楽しみです。

 

50代の星!『水泳』の成田真由美選手がスゴイ

増田さん
あと水泳競技では成田真由美さんに期待しています。50歳なんです、50代の星ですよ! アトランタパラリンピックから通算20個メダルを獲得していて、そのうち15個が金メダル! 一度引退されたんですが、東京パラリンピック開催が決定したことで、また復活。今回は背泳ぎだけに集中して出場するんです。成田真由美さんは8月27日が誕生日ですが、東京パラリンピック期間中に51歳に!。そんな成田さんが活躍したら、私も100歳まで頑張れますよ(笑)。オリンピックではスケートボードとかで若い子たちが活躍しましたけど、パラリンピックの選手たちはミドル世代で頑張っている人がたくさんにいるので、そこにも注目したいですね!

 

ボランティアの立場から、現場でパラリンピックをどう盛り上げる?

星野さん
今回、会場は残念ながら無観客ということですが、NHKのTV、ラジオでこれまでにない放送時間だと聞いておりますし、初めて民放でも試合を生放送したり、ダイジェスト番組を放送すると聞いています。みなさんぜひTV、インターネットを活用して、パラリンピックのいろいろな競技を楽しんでほしいです。今回のパラリンピックが盛り上がることによって、大会後のその先にも繋がるものだと思いますが、その期待はいかがですか?

増田さん
ハード面はもちろん、心の面でもよりバリアフリーが進めばいいですね。私は最近、パラリンピックの力を感じています。TVをつければパラスポーツをやっていたりするじゃないですか。自信を持って競技している姿を見るだけで、昔に比べてもっと身近に感じますよね。子供や若い世代が共生社会が当たり前のことだ、というのがどんどん広がっていけばいいですよね。

東京オリンピックのときに、中継で国立競技場に行って、ボランティアの方々にたくさんお会いしました。みなさん、よくいろいろな物をくれるの(笑)。札幌のコースマップが描かれたマフラーやバッジ、柿ピーをもらったりしました(笑)。そのときに、人に喜んでもらいたい、何かを与えたい、という方々がボランティアをやってくれていらっしゃるんだなと思ったんです。ぜひパラリンピックもそのままの感じで接していただければ、緊張している選手も和むと思います! ルールもいろいろあると思いますが、臨機応変に対応して行けばいいんじゃないかなと思いますね。

星野さん
ボランティアの方々から、パラアスリートに対してのサポートの仕方とか、どういう風に接してサポートしていけばいいですか、という質問も多かったです。

増田さん
そこは普段どおりでいいと思いますよ。さすがにレース前は緊張しているだろうから、あまり話しかけないほうがいいですが、レースが終わってしまえば、海外の選手なら「メイ アイ ヘルプユー?」と声をかければいいと思います。英語とスペイン語の挨拶が言えれば、大体大丈夫。あとは顔の表情やジェスチャー、ボディーランゲージでもいいと思います。私の友達の瀬古利彦さんは、海外で肉離れを起こしたときに、症状をどう伝えたかというと、「アイアム ミートバイバイ」だから(笑)。それでもアメリカで意味が通じたと言っていたので。そういった真っ直ぐな心やボディーランゲージで示せばきっと伝わりますよ。

 

あなたの身近な人から、パラリンピックファンを増やそう!

星野さん
今までパラリンピックを見たことがない人も多いと思いますが、そういう人にファンになっていただくために、どのように誘えばいいでしょうか?という質問も多かったです。

増田さん
純粋に楽しいよと。競技だけではなく、そのまわりの風景にも注目すると楽しいんです。選手をサポートする伴走者やコーラーがいる、というのはオリンピックと違いますし、風景として見ていても面白いんですよ。あとルールは分かったほうが面白いから、ある程度予習しておくといいですね。

星野さん
私もパラスポーツの現場を取材していて思うのは、本当に”百聞は一見に如かず”だなと。以前、ブラインドサッカーの選手にインタビューしたときのことですが、見えない中で競技をやっているので、ぶつかったり、転んだり、痛そうなんですよね。そのときに、「怖くないんですか?」と聞いたら、「ピッチの中は自由なんだよ」と教えてくれたんです。「普段は見えなくて、白い杖をついて、日常生活では恐々と生活をしたり、歩いたりしているけど、ピッチの中はボールか選手、せいぜい壁にぶつかるくらいで、自由に動けるんだ。怖いことなんかないから楽しいんだ」と。その答えを聞いたときに、こういうのがパラスポーツの醍醐味なんだなと感じたことがあります。

増田さん
ピッチの中で自由に開放されている選手を見たいなと思いますものね。

星野さん
そうですね。パラアスリートのみなさんは日常生活で不便なことを抱えていたりしますが、そういうことも想像しながら選手たちが躍動している姿を見てほしいなと思います。

 

【パラリンピックファンを増やそう!おすすめポイント3

競技だけでなく、周りの風景にも注目しよう
ルールを予習しておくと楽しみも倍増
百聞は一見に如かず!選手のストーリーも想像しながら観戦しよう

 

星野さん
ちなみに増田さんはアスリートの小ネタの収集力がすごいのですが、どのように集めているのですか?

増田さん
大体、選手のお母さんの携帯番号をゲットすることから始まるんですよ。大会を見に行ったり、取材に行ったりすると、まずサブトラックをチェックするんです。選手が大会の前に練習をするサブトラックのまわりには必ず家族が見に来ているのね。そこで選手のお母さんの携帯の番号をゲットすると、子どもの頃からのいろいろな話を聞けて面白いんです。大迫傑さんのお母さんともそれですごく親しくなったんですよ。

パラアスリートに関しては合宿にお邪魔したりすることもあるので、自然と選手からお話を聞けますね。ドバイの世界選手権で金メダルを獲得し、紅白歌合戦の審査員もやった走り幅跳びの中西麻耶選手ともよく話す機会があって。ひとつ彼女の小ネタを言うと、サラちゃんという3歳のワンちゃんを飼っているんですよ。サラという名前はヘブライ語で王女という意味なんだそうですが、サラちゃんもアジリティーという競技をやっていて、麻耶ちゃんも女王を目指してるから、部屋の中に競技者同士がいると、プライドがぶつかるんです!なんて面白い話をしてくれたりして(笑)小ネタはこんな感じでいいですか?

星野さん
ありがとうございます(笑)。最後に東京パラリンピックが行われることによって、日本の今後がどのようになっていけばいいか展望はありますか?

増田さん
パラリンピックはいろいろな人を巻き込むことができますよね。お互いの違いを認め合う、そういった心が育まれれば、街のバリアフリー化も進むと思うんです。それが広がっていくと、将来的には高齢者にも優しい街になるので。いろいろな意味で、パラリンピックが盛り上がっていくと、未来が変わっていく力になるんじゃないのかなと思います。そこに期待したいですね。

星野さん
パラリンピックを通して障害のことについて知り、競技の先の日常生活にも想像を広げて、みなさんへの優しい思いやりを持って接していただく、そういうきっかけになる大会になればいいですよね!

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