JOURNALジャーナル

ボランティアの可能性を広げる「分身ロボット」が始動!
成田空港での記者会見と研修の様子をレポート

2020

2021.07.12

障害のある方や基礎疾患のある方など、外出先での活動に不安を感じる方たちにもボランティアの機会を提供したい……そんな想いを以前から温めてきた千葉県と日本財団ボランティアサポートセンター。この度、ついに分身ロボットを操作して遠隔地から東京2020大会のボランティアに参加できる「千葉県×ボラサポ ボランティア2020 分身ロボットプロジェクト」を始動させました。

※ここに記載されている内容は、2021年7月1日時点の情報です。

去る7月1日には、分身ロボットの主な活動場所となる成田空港で、プロジェクトの全体像を説明する記者会見を開催。多くのメディアが取材に訪れるなか、千葉県環境生活部 県民生活・文化課 副課長の阿部賢太郎氏と日本財団ボランティアサポートセンター 事務局長 沢渡一登氏が、プロジェクトの企画主旨や分身ロボットの活用方法などの説明を行いました。ここではその会見の様子と、同日開催されたシティキャスト(都市ボランティア)のエリア別研修の様子をあわせてレポートしていきます。

 

同じ想いを共有する千葉県とボラサポがたどり着いた
                                                            新しいボランティアの形

記者会見は、日本財団ボランティアサポートセンターの沢渡氏によるプロジェクトの主旨説明からはじまりました。

冒頭で沢渡氏は、千葉県でボランティアに従事するシティキャストの皆さんに積極的に活用してもらえるよう、遠隔地から操作できる分身ロボット5台を無償提供したと発表。千葉県とボラサポが2019年9月に締結したシティキャストに関する連携協定を振り返りながら、今回の分身ロボットプロジェクトもこれまでに行ってきた各種研修への講師派遣やEラーニングにおけるプラットフォームの提供といった協定に基づく取り組みの一環であることを補足しました。

「東京2020大会がスローガンのひとつに掲げている『多様性と調和』。これを実現、体現するのは、ボランティアの皆さまにほかなりません。ボラサポは設立当初から障害のある方にも積極的にボランティアに参加いただけるよう、家や病院からでも操作できる分身ロボットの活用を模索して参りました。また、コロナ禍の現在では、家族に重篤化リスクの高い人がいるなどの理由からボランティア活動を諦めなければいけない人もいらっしゃいます。こういった方たちが物理的な距離や技術的な障壁を越えて従事できるよう、ボランティアの可能性を広げていきたい。同様の想いを千葉県さんも抱えていることから、今回のプロジェクトが発足しました」(沢渡氏)

続けて、千葉県の阿部氏から分身ロボットの活用方法について説明がありました。分身ロボットは大会期間中に特設される専用のブースに配置され、シティキャストの方たちは自宅などの遠隔地からロボットを通して、自らの言葉でおもてなしや県の魅力を発信できるといいます。また、現状では25名のシティキャストが操縦者の候補に挙がっており、これから研修を受けて当日の活動にのぞむとのことでした。

「(ボラサポから提供を受けた)5台のうち3台が成田空港で活用され、1台が第一ターミナルの2階に、もう1台が第二ターミナルの地下1階に配置される予定です(1台は予備用として保管)。期間は7月26日から9月8日までの間の約40日間、一人1時間の交代制で、1日あたり3〜4時間程度の稼働を想定しています。操作するボランティアさんのインスピレーションを大切にしながら、大会速報のアナウンスやクイズ形式での県の魅力発信なども行い、千葉県ならではの温かいおもてなしを実現したいと考えています」(阿部氏)

より具体的な活用イメージが湧くよう、阿部氏と県の担当者によるデモンストレーションも行われました。操作はスマートフォンやタブレットにインストールした専用のアプリを用いて行われ、操縦者は分身ロボットに搭載されたカメラやマイク、スピーカーを通して、その場にいるようなコミュニケーションをとることができます。

たとえば、大会を訪れた観光客から「千葉県で開催される競技で、注目している競技や選手がいたら教えてもらえますか?」という質問に対し、遠隔地のシティキャストの方が分身ロボットを通して「一宮町で開催されるサーフィンです。サーフィンは東京2020大会から採用された新しい競技です。地元出身の大原洋人選手も参加しますので、ぜひ応援いただければと思います!」といった回答をするなど、自らの言葉で温かいおもてなしをすることが可能です。

また、千葉県では分身ロボットによるおもてなしの他にも、ボランティア活動と感染症対策の両立が図れる、オンラインを活用した施策を実施していくといいます。成田空港エリアには語学や県に関する知識に長けたボランティアの方たちが数多くいることから、海外の方たちに千葉県の魅力を紹介するバーチャルツアーやボランティアの目線で活動情報を発信する広報活動などを行っていく予定とのことでした。

 

 交通の要所である成田空港でのエリア別研修

この日は分身ロボットプロジェクトの記者会見に加え、成田空港エリアを担当するシティキャストの方たちへ向けたエリア別研修も行われました。交通の要所として多くの観光客が利用する成田空港では、どこにどんな機能が備わっているかを事前に把握しておくことが活動のキモとなります。そのため、シティキャストの方たちは7月1日〜7月14日までの期間内に、研修を通して各ターミナルに設置された主要な施設やそこで行われている業務内容などを学びます。

たとえば、第2ターミナル1階の国際線到着ロビーで行われた研修では、広いロビーで次の行き先を迷ってしまったゲストを案内するにはどう対応すべきかなどのアドバイスを受けていました。シティキャストの方たちは海外から来る大会関係者の対応はしないものの、第2ターミナル1階は第1ターミナルと第3ターミナル、国内線とバスや電車などの交通機関を往来するゲストたちが行き交うことから、道案内を頼まれる機会が多く想定されます。

また、ゲストから尋ねられることの多い、トイレの場所を把握しておくことも大切です。トイレによっては介助する方が性別を気にすることなく入れるよう、男子と女子のトイレの中央に設置されているものもあり、オストメイトに配慮した器具が設置されているか、子どもが使いやすい高さのトイレはあるかなど、機能面についてもあわせて知っておく必要があります。

実際に研修を受けたシティキャストの園田紀之さんと藤吉恵子さんは、次のような感想を寄せてくれました。

以前勤めていた会社の同僚から、2012年のロンドンオリンピックがボランティア​運営において大きな成功を収めた大会であることを聞いた園田さんは、自国で開催される東京2020大会ではぜひボランティアとして携わりたいと思ったそう。シティキャストの説明会で教えられた「ボランティアとは相手に与え続ける『ギブアンドギブ』ではなく、自分を成長させる機会を与えてくれるもの」という言葉に背中を押されたといいます。

「今日の研修では、各ターミナルの要所要所をわかりやすく説明してもらえてありがたかった。家に帰ったら、地図を見ながらもう一度頭に入れるつもりです。当日はあまり押し付けがましくならないように、困った人を助けるというシンプルな姿勢でのぞみたいですね」(園田さん)

1964年の東京オリンピックを白黒テレビで観戦していたという藤吉さんは、当時の感動をつい昨日のことのように思い出すといいます。普段は成田空港で外国人観光客をお出迎えし、車寄せまで案内する仕事をしていることから、その経験をシティキャストの活動に生かしたいと考えたそうです。

「自分がした小さな親切が『ありがとう』という言葉で返ってくると、やはり嬉しいものですよね。私の大好きな成田空港にいらっしゃったお客さんの中から、『成田空港ってとっても素敵なところだった』『もう一度、千葉県に訪れてみたい』と思ってもらえる人をひとりでも多く増やしたい。そんな気持ちで今日の研修を受けていました。ボランティアで大切なことは、相手の困っていることを的確に把握することだと考えています。当日もスムーズなおもてなしができるよう、今日の研修を生かしていきたいですね」(藤吉さん)

成田空港エリアで活動するシティキャストの皆さんは、大会を訪れたゲストの方たちが最初に接する、“千葉県の顔”となる方々です。現地でのおもてなしはもちろん、分身ロボットを通したコミュケーションを含め、心からの笑顔とホスピタリティあふれる行動で多くのゲストの方たちを迎え入れてほしいですね。

text by Jun Takayanagi

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