JOURNALジャーナル

東京2020大会参加国の国歌を歌って選手を応援!
ボランティアが取り組む感動のプロジェクトをレポート

2020

2021.07.19

東京2020大会に参加する国や地域は200以上。その全ての国や地域の国歌(国旗歌・賛歌を含む)を現地の言葉で歌って、海外からくる選手たちを応援しようというプロジェクトが「Yell for one」プロジェクトです。今まで聞いたことのない言語もある中、全ての選手がベストパフォーマンスを発揮できるよう、国歌を歌うボランティアの人々が、言語指導を受け練習する様子をレポートしました。

コロナ禍でも国歌を歌って選手を応援

発音指導にあたったフェロー諸島出身のふたり。ELSA MARTINA SAKAGUCHIさん(左)と、HALLUR MORTENSENさん(右)

新型コロナウイルスの影響で、東京2020大会に海外から参加する選手たちは、自国の家族や友人の会場での応援を受けられなくなりました。そんな海外の選手たちのために始まったのが、ボラサポの「Yell for one」プロジェクトです。このプロジェクトの趣旨に賛同された方が6人1組となって、それぞれの国や地域の国歌を歌い、その様子を録画・編集して1つの動画として配信し、選手たちを応援しようというものです。このプロジェクトは、同じく各国の国歌を歌い、CD化するというプロジェクトを進めている山田和樹アンセム・プロジェクト実行委員会が協力をしています。

しかし、ただ国歌を歌うと言っても、簡単なことではありません。大会に参加する国と地域は200を超えるため、中には耳慣れない言語も存在します。中でもフェロー諸島の国歌は参考となる音源がなく、言語もフェロー語という馴染みのない言葉でした。そこで今回、フェロー語に近いというノルウェー語を得意とする株式会社ノルディックカルチャージャパン代表取締役の井上勢津さんと、日本在住のフェロー諸島出身のふたりELSA MARTINA SAKAGUCHIさんと、HALLUR MORTENSENさんが発音指導を担当。フェロー諸島の国家を歌うボランティアの深野さゆりさんと深川史麻さんが、東京混声合唱団に合流し、合唱の練習を行いました。

フェロー諸島の難しい発音を、現地出身のふたりが直接指導

練習当日、東京混声合唱団のメンバー20人と、ボランティアの2人を前に、早速フェロー語の発音指導が始まりました。事前に井上さんがカタカナで読み方を振った楽譜をもとに指導は進められました。

しかし、フェロー語には母音が16も存在するため、カタカナでは表現しきれない音があるのだそう。そのため文字では表現しきれない音を1語ずつフェロー諸島出身のふたりが発音をしながら指導するものの、コロナ禍の練習では距離を取り、マスクをしているため音が聞き取りづらく、口元を見ることもできません。

練習は困難を極めましたが、限られた時間の中、根気よく指導は続けられました。そして最後にピアノ伴奏に合わせ全員で合唱したときには、素晴らしいハーモニーが響きわたり、フェロー諸島出身のふたりは感動で目に涙を浮かべていました。

真剣な表情で東京混声合唱団の方と一緒に練習するボランティアのふたり。深川史麻さん(左から2番目)と、深野さゆりさん(一番右)。

ボランティアのおふたりは、今回国歌を担当することになり、フェロー諸島についていろいろ調べたとのこと。「今まで知らなかった国のことを知るいい機会になりました」(深川さん)。「国歌にも、歴史や文化によっていろいろな特徴があることを知ることができた」(深野さん)と、このプロジェクトに参加する意義について語ってくれました。またこの参加を機に、各国の言語の「こんにちは」「頑張って」という言葉を覚えたいという目標ができたとも。

そして、HALLURさんは「自国の言葉ながら難しいと思うフェロー語ですが、上手に発音してくれて、とても感動しました」とのこと。また、ELSAさんは国歌を大会で聞くことはないだろうと思っていたそうです。なぜならば、フェロー諸島はデンマーク自治領のため、オリンピック・パラリンピックに参加する選手はデンマーク代表として参加するためだそうです。「まさか日本で日本人が歌うフェロー諸島の国家を聞けるとは思っていませんでした。とても素晴らしい歌声で、ホームシックになったくらいです」とELSAさんが感極まった様子で話してくれたのが印象的でした。

東京2020大会はコロナ禍という予期せぬ事態によって、ボランティアの人々が想定していた「おもてなし」をすることができなくなりました。それでも練習風景からは、ボランティアひとりひとりの「選手を心からもてなし、応援したい」という気持ちが伝わってきました。未だ新型コロナウイルスにより困難な状況下ではありますが、知恵を絞り、国や人種を超えてすべての選手を応援したいという気持ちがあれば、世界はひとつになれるのではないかということを、改めて実感させられた有意義な時間でした。

text by Kaori Hamanaka

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